心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

バジルのカクテル「バジル・スマッシュ」と味覚の冒険

水曜日を有休消化で休みにしていたので、火曜日の夜はいつものバーへふらりと。
ここに来て急に気温が上がり、上着もいらないくらいの夕暮れ。こうなってくるとキュッと爽やかなものが飲みたくなるものです。

ジントニックでさっぱりと喉を潤したあと、マスター曰く「いつでもそばに寄り添ってくれるような優しいウイスキー」ノッカンドゥを堪能。マジで優しいぜ……。
さて、もう一杯いこうかな……というところで、フルーツカクテルが書かれた黒板をよく見ると「バジル」の文字が。
バジルのカクテル?と思って話を聞いてみると、結構な自信を持って「美味しいですよ」と言われたので飲んでみることにしました。

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材料となるのはジン、レモンジュース、シュガーシロップ、そしてバジル。バジル以外はジンフィズに似ています。
すり潰したバジルと、上記の材料をシェイクすると完成。ジンフィズのようにソーダで割ったりはしないので、そこそこアルコール度数はあると思います。

レモンの爽やかさとシュガーシロップの甘さに、バジルの香りがガツンと効いた一杯。
これは……めちゃくちゃ美味いですねえ……。レモン&バジルは、これからさらに暑くなってくるシーズンにもぴったりな感じがします。
バジルというと、パスタやピザのイメージがあまりにも強かった。こういう甘い系の味にも、バジルの風味というのは驚くほど合うんですね。新たな発見でした。
ちなみになかなか注文は入らないらしい。やはり先入観が邪魔して逡巡してしまうのかな。なんだか日本人らしい気もしますが。

調べてみると、このバジル・スマッシュというカクテルは世界的には結構メジャーっぽい。バジルをsmash=すり潰す、ということからバジル・スマッシュみたいですね。
バーのマスターによると、以前海外のお客さんが来た時に「バジルのカクテルはないのか」と聞かれ、バジルを用意していなかったことがことの発端だそうで。
その後若手で、海外でも働いたことのあるというバーテンダーさんのいるお店に行ってこのバジル・スマッシュを作ってもらったものの……いわゆる一般的なレシピではどうもしっくりこなかったそうで。
そこからおそらくレシピの割合などをマスターなりに調整したのが、今回自分の飲んだバジル・スマッシュということのようです。


「人生っていつでもちょっとした冒険ができると思うんですよね」とはマスターのお言葉。
実際にどこかに出かけることだけが冒険ではありません。今まで食べたこと・飲んだことがないものにチャレンジすることだって小さな冒険。自分が日々読書をしていることだって、考えてみれば知らないことを読書を通じて知る・学ぶという冒険かもしれません。今回のバジル・スマッシュなんかはまさにそんな小さな冒険の1ページ。
この日一緒になった初めてご来店のお客さんも、このバー独特のウイスキー飲み比べセットで新たな冒険をしていました。ジョニ黒と、そのジョニ黒を構成するキーモルトのうちタリスカーラガヴーリンの3種類を飲み比べていて。「ジョニーウォーカーのエッセンスを分解して飲む」ことで、なぜ自分がジョニ黒を好んで飲むのか、その一端が分かった気がすると言っていましたね。

こうやって振り返ると、なぜ自分がこのバーを好きになったのかが分かる気がします。
マスターの言う「ちょっとした冒険」。この感性が自分にも確かに備わっていて、マスターと会話しながら決める次の一杯には何か冒険があるからです。お酒以外の会話をしていても、妙に話が合うような気がします。マスターの休日やプライベート、何かしら冒険に満ちていて聞いているだけで楽しいんです。椅子から落ちて肋骨にヒビが入った話とかも、すっげえ広義の意味では冒険かもしれませんし。

何よりそんなマスターの考え方や想いが、バーに並ぶウイスキーや作られるカクテルにも滲み出ているからかもしれません。それこそウイスキー飲み比べセットなんて、マスターの言う「小さな冒険」の分かりやすい提案ですし。
クラシックなカクテルも大事にしながらも、そこにちょっとしたマスターなりのエッセンス……小さな冒険が加わっている。
バーというのは特別な空間ではあるけど、一方で日常の延長線上でもあるようなバー。かしこまって「行くぞ!」という感じでドアを開けるオーセンティックなバーでもなく、かといって居酒屋ほど気軽に入るほど緩いバーでもない。行こうかなという日は、その日の早いうちから「よし、今日はバー行きますか」と心に決めておきつつ、いざ行く時にはふんわり入店するみたいな。
そのような「日常から半歩踏み出す」みたいな感覚がこのバーにはあって、それはまさにマスターの言う「小さな冒険」を体現しているのかもなあと思いました。やっぱり店には、その作り手の「人」が出ますね。