心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【ウイスキー】やはりジャパニーズは飽和状態なのでは

今月発売の『ウイスキーガロア』を読みました。それを踏まえて、思ったことや考えたことを思いついた順にただ書き殴ってみます。
ということで重複する内容を書いたり、前後の文脈がぐちゃぐちゃだったりする可能性が高いですがご了承ください。

今号の巻頭特集は「ジャパニーズウイスキー、次の100年」。
2010年には僅か8ヶ所しかなかった日本のウイスキー蒸留所は、2023年の段階で97ヶ所にまで増加。これから稼働予定のものも含めれば100を超えます。
一方で爆発的に伸び続けたウイスキーの海外輸出額は、ついに昨年は2022年を下回り減額に転じました。
ウイスキーガロア』内では国産ウイスキーがここからより発達するためには、ジャパニーズウイスキーをしっかり定義する法整備の必要性などを議論していましたが、個人的にはもっと単純な話なようにも思います。
要するに「ここらがピーク」なんじゃなかろうか、と。

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輸出されているウイスキーの内訳が知りたい

減額したとはいえ、2023年のウイスキー輸出額は501億円。これに次ぐ清酒でも411億円となっており、圧倒的にウイスキーの国外需要の高さを感じます。
……が、この「501億円」の内訳が分からないんですよね、これ。
まあどう考えたところで、そのほとんどがサントリーあたりだと思います。山崎や白州、響などのハイブランド帯と、角瓶などのリーズナブルなものと。
秩父蒸溜所のウイスキーなど、海外でもかなり高い評価を受けている銘柄も多いですが、生産量が全然足りていないはず。
どのくらいの量を、どのくらいの単価で輸出した結果501億円なのかを知りたいところなんですが、おそらく清酒やビールなどと比較して、圧倒的に商品単価が高いというのも輸出額の高さの要因な気もします。

需要と供給

結局、世界規模で見ると相変わらず「ウイスキー」の需要は供給を大幅に上回っているのは変わらないものの、一方で「日本のウイスキー」に関してはそろそろ需要と供給が釣り合い始めてきたのではないかな、などと思ったりするわけです。
あとぶっちゃけた話、実際のクオリティ以上にジャパニーズウイスキーというブランドだけで売れている部分の魔法も解け始めているんじゃないかなとか。

ウイスキーガロア』内では、日本のウイスキーに関する法律がガバガバなため、国外においてジャパニーズウイスキーの品質に対する信頼が薄いのではないか、だから法改正などを訴えていく必要があるのではないか……と論じていました。
まあ実際に、日本のウイスキーに関する法律は極めて雑というか。スコットランドなどと比較するとウイスキーの定義が本当にガバガバで、その酒のうち10%がウイスキーなら「ウイスキー」を名乗ってもいいことになっています。
トップ◯リュのアホみたいに安いウイスキーがあるんですが、アレはボトルに「モルト・グレーン10%以上、スピリッツ90%未満」と書かれています。9割がウイスキー以外のアルコールでも「ウイスキー」と表記していいのが現在の日本です。

とまあ問題大アリなのは事実だし、自分もその辺の法改正はやるべきだと思うんですが……現実問題として、世界中のジャパニーズウイスキーを飲む人が、そこまで考えてるんか?というのが素朴な疑問です。
ぶっちゃけた話、ウイスキー自体の味を本当に楽しむ為に高額ウイスキーを購入している人ってそのうちの何割なんだっていう。
個人的な話にはなるけど、昨今妙に有り難がられている山崎や響などのウイスキーも、実際に飲んでみれば「まあ美味いけど……」くらいの話なんですよね。有り体に言えば値段相応なのかって話。

「ジャパニーズウイスキーだから」という理由で(味よりもそのブランドバリューによって)売れていた面も大きいと思うんですよ、個人的には。
ある程度ジャパニーズウイスキーの存在が世界一般に認知されてきて、ここから必要なのはそのブランドバリューに釣り合うだけの味や香り、つまりウイスキーそのものの純粋なクオリティの高さだと思います。あともちろんコスパの良さもね。
そういう面で見た時、少なくとも自分はスコッチには到底及ばないと思います。当たり前なんだけど。

コスパのブレンデッドが必要

純粋に「海外輸出額」の方を伸ばそうと思った場合、世界の一般的な人が日常的に飲むことができるレンジの商品が必要なわけです。なぜならウイスキー売り上げの大部分は、そういうタイプのブレンデッドウイスキーだからです。
スコッチでいうとバランタインジョニーウォーカーですね。こういった「値段は比較的安価で、大量生産ができる」ブレンデッドウイスキーが必要。
日本の場合パッと思いつくのは角瓶なんですが、その角瓶ですら需要が高まると品薄になったりするのが現実。

結局絶対的に生産量が足りていないと思うんですね。
現在たくさんできている新規蒸留所ですが、そのほとんどがそれぞれの色を出したシングルモルトを作るタイプ。ターゲットにしているコアレンジが多少なりともウイスキーにこだわりがある層になると思います。

これ以上ジャパニーズウイスキーの売り上げを伸ばしたいなら、サントリーのようなグレーンウイスキーも作れるような大きな蒸留所がポンポン誕生し、さらに角瓶くらい手軽な値段で味もいいブレンデッドが安定的に生産できて、さらにその商品のブランディングが世界規模で上手くいく……みたいな話がないと無理だし、現実問題そんなもんは不可能です。

逆に言うと、日本の場合これからもシングルモルトを中心にして売っていくしかないので、高額ウイスキー中心に勝負し続けるしかない。
そして、そういうレンジ帯の人に対するウイスキーの需要は現在の状態が釣り合ってしまったのではないかと思います。

そういう意味で『ウイスキーガロア』で提示された、国産ウイスキーに関する法改正は必要なアクションだと思う一方、それをしたところでこれ以上出荷額が増える可能性は低いと考えています。
そのためには客層の新規開拓が必要。要するに普段バランタインジョニーウォーカーなどを愛飲する人に、それらと同じ価格帯で提案できるジャパニーズウイスキーを安定供給できないといけないわけですが、それができない。
現状はシンプルにこれ以上売るものがないのだから、これ以上輸出額が増えるというのは難しいんじゃないかと思います。