心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【鎌倉殿の13人】源頼朝を深読みする

まあドラマ内では、頼朝が自分の死期を悟ったから怯え、焦っているという答えがナレーションで出てしまっていたんだけど。

敢えて自分なりに作中の源頼朝という人間のことを色々考えてみたい。
歴史としては、やはり頼朝の一番偉いポイントは「武家政権を設立した」ことになると思うんですが、その鎌倉幕府は150年弱も続くことになるわけです。この長期政権の創始者なのはめちゃ偉大なんだけど、これは逆説的に源頼朝個人の存在意義が薄いことの証明でもあるんじゃないかと。
ここが頼朝の焦りや怯えポイントではないかな?なんて思ったりして。

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鎌倉幕府が長続きする=源頼朝個人に依存しないということ

長いこと続いた鎌倉幕府の初代征夷大将軍源頼朝だけど、そんな幕府はご存じの通り頼朝の死後も淡々と続くわけです。淡々とか書いたけど、頼朝他界後に始まる幕府の数々の内乱、更には承久の乱まで起きて、そんな中でまず3代将軍・実朝が暗殺されるまで起きてたりするのに普通に存続し続ける鎌倉幕府。その後には元寇まで発生する。
こんなもん普通なら幕府自体崩壊してもおかしくないと思うんだけど(この後で劉備他界後の蜀漢と比較していきます)、そこを北条一族が実権を握りながら存続させ続けるわけですよ。まあ内乱の部分は北条一族の謀略感あるけど。

結局重要だったのは個人の能力じゃなくて、守護・地頭や政所、侍所、公文所問注所などの国家運営の「システム」だったわけです。
極論それらのシステムが動けば政権運営は存続可能で、要するに鎌倉幕府が完成度が高ければ高いほど「征夷大将軍も誰でもいい」ということになる。実際4代目将軍から頼朝直系じゃないという。

作中では既に頼朝は「自分がやるべきことはもうないのか」と言ったニュアンスの発言をしている訳で、征夷大将軍になってしまった頼朝は幕府内部でやることが特になくなっているんじゃなかろうか?と。
幕府に必要なのは頼朝個人ではなくて征夷大将軍(誰でもいい)だったはず。
だからこそ幕府は長続きすることになるんだけど、頼朝としては「あれ?一番偉いはずなのに僕必要なくね?」ってなってた可能性はあると思うんだよね。特に源“大泉”頼朝の場合。
極端に自分の地位を脅かされることに恐怖を感じるのが頼朝。上総広常、木曾義仲源義経源範頼……。
あくまでドラマ内における頼朝像で想像するけど、頼朝が落馬せず存命だったとしても信長や家康のように、サッと息子に家督を譲れたのかと考えると若干疑問なんですよね。下手すりゃ息子にすら怯える可能性あると思うんだけど。
……んでそういう精神性を大江広元に利用されてる感あるんだよな、ちょっと。

諸葛亮との比較

ということで比較として、三国志における劉備が亡くなった後の蜀漢という国家について。
蜀漢という国が劉備亡き後、多分全世界史の中でもトップクラスの人間性能をしている諸葛亮という人間によって運営されていたわけですが……そんな諸葛亮五丈原で世を去った途端に内部崩壊していくんですよね。戦場から撤退する時点で既に仲間割れが起きて、魏延が暴走している。

これは蜀漢という国家が諸葛亮個人に依存していて、蜀漢という国家のシステムが全然整備されていなかったことを示す好例だと思うわけです。
鎌倉幕府とは真逆で「諸葛亮がいないと国家運営ができない」状態だった。一人で内政と軍事をやろうとするし、恐ろしいことにそれができる人物だったのが諸葛亮。できてしまった、という方が正しいのかもしれない。
諸葛亮没後は、費禕という人物が諸葛亮の手腕をある程度理解していたためしばらくはなんとかなるものの、その費禕が亡くなるといよいよまともに国家運営ができなくなっていく。諸葛亮は一人で両方やってたから激突しなかったけど、死後は北伐を続けたい武官と内政を重視する文官とでまた内部分裂が起きていって……という感じで、さらに悪政も広がりグズグズと国力が疲弊していって最後には魏に滅ぼされます。

比較の好例だと思って調べたら、むしろ諸葛亮没後に意外と保ってて例として正しくない気がしてきた。
とはいえ蜀漢の実質的な2代目である諸葛亮が亡くなった途端に国家が混乱していくことを考えると、実権は北条氏とはいえ9代続く鎌倉将軍(執権である北条氏は16代続く)と思えばやっぱ違うんかなって。まあ日本の場合は三国志の時代と違って、地続きの敵国がないのも大きかったとは思うけど。

頼朝の偉大さゆえに頼朝が必要ない状態

ってことで、頼朝は「頼朝が必要ない政治システム」を完成させたからこそ偉大なんですが、それは同時に「頼朝という個人の存在意義を自己否定する」ことでもあったわけです。
若い頃は人質状態だったりして人生半分諦めていた頼朝が、北条時政と出会ったことが転機で歴史の表舞台へ飛び出した。
「自分が清盛を倒さないと意味がない」「自分が源氏の棟梁でなければ意味がない」「自分の立場を脅かす者は許さない」
この辺のスタンスは作中の源頼朝の「変わらぬ人」ポイントであって、若い頃に自分の存在理由を半ば失っていたことの反動というか。せっかく手に入れた自分の存在意義を再び失うことに耐えられないのではないか、などと思ったわけです。