心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

鎌倉殿の13人 最終回「報いの時」感想

最終回のサブタイトルが「報いの時」っていうのが、もうこれまでの大河ドラマとは一線を画す異質さを醸し出していますな。
まあ大体はそれまでの主人公の人生を肯定的に捉えてエンディングに向かうでしょうから、このタイトルだけでも三谷幸喜なりの覚悟みたいなものが垣間見えるといいますか。

平家を倒し、ライバルとなる源氏も倒し、その後は幕府内での政敵も倒し、父を倒し、幕府の長である源氏将軍をも倒し、最後には朝廷すら倒すことになる男・北条義時
振り返ってみると、今年の大河は本当に容赦なかったなって。三谷幸喜作品は、三谷幸喜という人物がとらえどころのない面白人間だから勘違いしがちなんだけど、その実他の人が書いた脚本よりも史実や史料を大切にした歴史作品を構築しているんですよね。だから歴史好きこそ本当に楽しい作品になる。
歴史自体は改変せず、史料として残された「事件」という事実に対して「ああ、そういう解釈してくるのか!」みたいな面白さが三谷大河の魅力かなあと思います。真田丸もそうだったし、もちろん今年もそうよね。

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吾妻鏡を読む徳川家康……という流れで、しれっと来年の大河ドラマと繋ぎますか。
うーん……やっぱり来年の大河ドラマ観る気にならないんだよなあ。どうやっても自分の中で徳川家康松本潤が結び付かないんですよね。あと「どうする家康」ってタイトルは不安しか想起させないよ……。
家康以外のキャストがゴリゴリに固められているのも、逆になんかね。

北条政子の感動的な演説は確かに効いたように見えるものの、現実としては実際に朝廷と戦うかとなるとそこはまた難しいポイント。
承久の乱、その先陣は大将の北条泰時を含めて18人でスタート。源頼朝が初めて立ち上がった時の戦いを思わせる展開。やはり北条義時という人間のベースは、源頼朝から学んだことなんですねえ……。

まだ三浦義村は北条への反撃を考えていました。
泰時軍、結果的には兵がだいぶ集まってズンズン進撃します。というか藤原秀康という人物、武士としての能力はどんなもんだったんですかね?1戦目はナレーションで速攻負けてたけど。
戦における渡河って本当にリスキーらしいですね。渡っている最中は完全無防備状態、移動速度低下。最大のチャンスとも言える宇治川の戦い。ここで決めきれなかった時点で官軍はもう勝ち目なかったのかもね。
そしてこの承久の乱を通じて、北条泰時も次の鎌倉幕府を治める武士のトップとしての覚悟やらなんやらを身につけたような感じがある。

なるほど……なるほどなるほど?
後鳥羽上皇、時房を調略して「この戦の首謀者は自分ではない」ということで責任回避を狙うか。やりますね。さすがだよ。
後鳥羽上皇流罪を命じる義時。しかもちゃんと罪人として扱うのがまた。
義時、もう一通り罪は自分が全部背負って、泰時とこれからの幕府にはそういうものを残さずに自分が去るつもりに見え……おっと義時くん、ダウン!!

戦で親を失った子供たちに武芸を教えさせる……ってのとはちょっと因果が。現代だとこういう悲しい流れのチャイルドソルジャーいますよね、これ……。
いや……これのえさんの入れてきたお茶、これ毒では?

おっ!これは北条泰時による御成敗式目の制定来るか!?
ここでの御成敗式目という明確なシステムを作るのは、綺麗ごとではなく、むしろ真逆なのがいいですね。

運慶が彫った「北条義時に似せた仏像」を斬ることができない義時。
ここ短いながらも、結構いいシーンですね。運慶のことも斬らなかったのも考えると、自分がその仏像に相応しい人間になってしまった自覚はあるんだろう。

のえさんマジで頭おかしいよこれ……。ただのサイコマンだよ。いくら自分の息子に家督継がせたいとしても、旦那に毒盛るかね?
なんというかね、この人やっぱり根本的に強すぎる野心に対して、頭が悪いんだなあと思います。こんな簡単に見抜ける形で毒を持っていたあたりとかね。
身の丈に合わなさすぎる欲望を持っている人間……って感じなのかな。北条時政なんかと違って愛嬌もないし、個人的には最後まで好きになれないキャラクターでした。

んで北条義時にとって真のラスボスは三浦義村ルートですか……?と思ったら、自分を始末しようとしていた義村を許すことで、ようやく真の意味で友になったか。
三浦義村はずっとずっと「俺の方が義時より能力があるのに」という感じでコンプレックス抱えていたんだな。
「これから先も、北条は三浦が支える」って言葉、結構すぐ後にそれ破られるけどね。
んでその毒を代わりに時房が飲んでて笑うわ。

御成敗式目、完成。
ちゃんとルールを制定したから、これから泰時治世下ではめちゃくちゃ平和っていうのが素晴らしいですな。

現代において悪女と呼ばれている政子に「後世において悪女と呼ばれても構わねえ」と言わせる。
でもドラマを観てきた我々は、北条政子がそんな人間ではないことを知っているというのがいい。

ここでタイトル回収かぁ……。
北条義時が始末した人間が13人か。これが「鎌倉殿の13人」だった……。
北条義時の最後の罪は「北条政子に対して自分が頼家を殺したことを隠していた」ことでしょうか。そしてこれが、最後の最後に深層心理における政子の何かをプッシュしてしまったんだろうな。

うわあ……北条義時を救うために、北条政子が間接的に義時を殺すのか。愛憎渦巻いていると思います、直前の頼家の真実とか色々混じって。
すげえ終わり方だわこれ……。こんな寂しい終わり方の大河ドラマ、初めて観たかもしれません。義時の死に対しての政子以外の人物の反応のシーンも一切なし、みたいな感じも凄まじい余韻を残しましたね。


序盤はコメディパート多めなところから、上総広常を謀略で仕留めるあたりから徐々に本性を表し始めた今年の大河。後半はまあとにかく闇がすごかったけど、それだけに義時の言っていた通りの「綺麗事だけでは務まらない」という当時の現実を濃厚に描いてくれたようにも思います。
そういった戦乱の時代と安定しない鎌倉幕府という政治機構の黒い部分と、北条一族の家族の物語と。
ちょっと上手いことまとまらないんだけど、とにかく素晴らしい大河でしたね今年……。はじめは「言葉遣いが現代すぎるだろ」とか色々思っていたけど、歴史そのものをちゃんと大事にした脚本だったから全く問題なかった感じでしょうか。
まあとにかくこんなエンディングになるか……と。確かに予想なんでできない終焉だったけど、この寂しさとか色々含めて「報いの時」だったなって。


来年どうすっかなあ……。家康観るかなあ……うーん。