心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【FGO】コイン炎上事件を振り返る

2度にわたるお詫びのディレクターレターとゲーム内対応の方針発表で、ひとまずは落ち着いた感のある炎上事件。
自分がFGOを長いことプレイしていて、ぶっちぎり1番に炎上したのが今回。よりによって9周年のタイミングで発表されたゲーム内の追加システムに関連して大炎上したから、せっかくのお祝いムードも台無しです。

とはいえ、発表した直後の状態はあまりにも露骨すぎる課金誘導に見える改修だったため炎上もさもありなんという感じでしたが。たくさん課金して遊んでいる人ほど不満が大きくなるような状態だったのは異常事態でした。
微課金者レベルでも色々思うことはあった事件なので、少し自分なりに振り返ってみたいと思います。

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アペンドスキルとコインの概要

サーヴァントのさらなる育成要素として、アペンドスキルが2つ追加されました。これでアペンドスキルは合計5つに。

これにより、現在1体のサーヴァントの育成要素を全て上げる、いわゆる「完全体」という状態は、サーヴァントレベルを120にした上でアペンドスキルを5つ全て解放するという状態になりました。

問題はこのために必要なコインの量。
ゲーム内では、基本的にサーヴァントの絆レベルを上げることでしかコインを入手できず、ほかの方法はガチャで該当のサーヴァントを引き当てることになります。

これまでは120レベル+アペンドスキル3つだったのですが、これを星5サーヴァントで達成するためには同じサーヴァントを6体当てる必要がありました。ちなみに宝具レベルの最大値は5なので、6体目はマジでコインのためだけに引くことになりますね。
「宝具6が必要」という時点で個人的には頭がおかしいと思っていたんですが、今回アペンドスキルが2つ追加。当然これの解放にもコインが必要なため、同じサーヴァントを8体引かないと完全体まで育成できない事態になっていました。

正直狂ってるよね、これは。じゃあ宝具レベルも8まで上がるようにしなさいよと思います。
一応6体目以降の星5サーヴァントを引いた場合「無記名霊基」というアイテムが貰えます。これは好きな星5サーヴァントと交換できるというシロモノなんですが……10個集まってようやく1体と交換できます。こんなもん救済措置として機能していないんだよなあ。10体って。

ちなみにコインの話でいうと、一番ヤバいのは星4サーヴァントらしいです。
星5よりも1体引いた時に獲得できるコインが少ない星4サーヴァントでは、完全体を育成するためには24体引く必要があったらしい。無理だよ。

0.8%×8体

コイン獲得にはガチャで引き当てることが必要という話を枕にして、続けてFGOのガチャ確率について。まず星5サーヴァントの当たる確率は1%。エグい。

ただしこの1%は「何かしら星5サーヴァントが出る確率」です。特定の狙ったサーヴァントとなるとさらに確率は狭くなる。

例えば現在ピックアップガチャが開催されている、9周年記念サーヴァントのスペース・エレシュキガル。
ゲーム内でガチャの提供割合を確認してみたところ、ピックアップされているスペース・エレシュキガルが当たる確率は0.8%となっています。

仮に今回スペース・エレシュキガルを120レベル、アペンドスキル5つを解放した状態に育成したい!と思ったら、この0.8%を8回引き当てるまでガチャを引く必要があるということになります。うわぁ……。

実際YouTubeの配信者かな?たしか12万円だかぶっ込んでエレシュキガルを8体引いていたような話を見ました(自分で動画は観ていないので、違う人のことかもしれないけど)。
やや余談ですが、こういう話を見ると、日本のスマホゲームの集金システムの異常性はよく分かる。遊んでいていうのもアレですが、お金の使い方は個人の自由とはいえここまで行くとギャンブル中毒なんかと大差ないと思いますし、そういうやり方を肯定している日本のスマホゲームのガチャ形態はやはり問題があると思います。何かしらの規制とかが出てきてもおかしくないと思いますし、海外では実際に日本のスマホゲームガチャのビジネス業態に問題提起がされたりはしているっぽいし。はっきり言うと健全ではないよね、これ。

話を戻しまして。
完全体にしたいと思ったら、0.8%を8回引くとかいうことを強要されるわけですね。怖いゲームですよ。

さらに完全体を目指す人は、特定のサーヴァントが好きでそれを目指すわけですが、上記の確率を踏まえると、目的のサーヴァントがピックアップされているガチャが来ている時しか現実的ではありません。

ちなみに現在のFGOは、ゲーム内のイベント開催期間が2週間から3週間に延長。つまりイベントなどのゲーム内コンテンツの密度は薄くなり遊ぶ要素が減っている一方で、復刻ガチャだけは乱発するようになっていて……醒めた目でこの様子を見ると、遊ぶコンテンツは減ったのにガチャだけは回させようとする状態。この辺も地味に「露骨に集金しようとしてんなあ」と個人的には思っていました。

完全体は趣味の領域ですが……

先ほど「強要されるわけですね」なんて書きましたが、完全体はあくまでも趣味の領域。普通に遊んでいる分にはレベルを120まで上げる必要性もないし、アペンドスキルも5つ全て解放する必要もありません。
レベルはコインを使わずに上げられる100レベルでも十分強いですし(というか初期の最大である90でも基本困らない)、宝具1でも絆レベルを上げれば有用なアペンドスキル2つくらいは最終的に開けられるのかな?
まあそんな感じなので、そもそも「このゲームで完全体育成とか無理やろ」と初めから思っている自分のような人、無〜微課金くらいの人はほとんど影響がない問題だったというのも伝えておく必要はあると思います。

むしろ、完全体サーヴァントが趣味の領域だからこそ大炎上したのが実態でしょうね。
完全体=廃課金がほぼ必須のコンテンツなわけですから、そもそもの廃課金者に対して「もっと金出せや」と追い討ちをかけるようなムーブをゲーム側がしてきたというか。
今までの時点でそこそこやべえ課金を要求しているのに、さらにその段階を引き上げるのかよ……という感じで。
微課金者を増やすよりも、既に高額課金している人からさらに課金させる方が売上が伸びるというデータでもあったのかなと思います。それを踏まえた上での経営的な戦略が今回のやり方だったのかもしれませんが、こんなもん誰が良い印象を持つんだって話ではあります。関係ないところで遊んでいる自分ですら「このやり方は酷い」と思ったし。

一番売上に貢献してくれているプレイヤーこそがもっとも不満を持つような改修をしてきたので、色々と推察する人も出ています。
FGOを巡る運営や開発周りの企業はここ数年でだいぶ変わっていて、運営・開発がディライトワークスから独立したラセングルに移動。さらにそのラセングルがアニプレックスの子会社化。
この辺の流れがあってからの今回の話なので、親会社であるアニプレックスからもっと売上を短期的に上げるように指示されたんじゃないの?とか。今までのFGOのことを知らない人が提案したような改修だった気がします。

そもそもアペンドスキル実装時に、FGOのディレクターが「将来的にコインの獲得難易度の緩和なども考えている」といった旨の発信をしていたので、それをしないままスキル追加となった今回の動き自体がそもそもおかしいといえばおかしいので。
会社内部の何かがあってもおかしくないような流れではあるんですよね。今までのFGOだったらなさそうなタイプの炎上でしたから、今回。

対応策は発表されたけど……

発表直後からネット上ではかなり炎上したこともあり、その後速攻でアペンドスキルを付け替える機能の実装、ついでゲーム内でのコイン獲得手段の緩和(絆レベル上昇時に獲得できるコイン量の増加)や超過したコインや聖杯鋳造に用いたコインの還元などの対策を取ることが発表されました。
結果としては、これまで通り6体同じサーヴァントを引けば完全体まで育成できるようになるみたいですね。
対応はすごく迅速だし、何をやっても不満は出てしまう中ではかなりいい落とし所かなあとは思います。まあ個人的には、やはり宝具5になった段階で完全体まで育成できるようにしてくださいよ……とは思うけどね。結局6体必要なのはやっぱり歪です。宝具は5までしか上がらないのに。

細かいところだけど、過剰に余ったコインは他のサーヴァントのコインと変換できるような対応をしてくれるみたいなんですが、これもまたちょっと納得がいかない人が多そう。
先に書いたスペース・エレシュキガル完全体のために12万円使った人を例にすれば、この人は「スペース・エレシュキガルのために」12万円を使ったわけで、お詫びと改善の結果やっぱり宝具8ではなく6で済むようになったので、余った分のエレシュキガルのコインを他のサーヴァントのものと交換できますと言われても……という感じなんじゃないかなとは思う。
他のサーヴァントコインと交換できると言われても、エレシュキガル以外のためのコインが欲しくてガチャを回したわけではないからね。12万円使うほどの熱量だぞ?


さて、問題発生・大炎上からの対応策決定・発表まではとても迅速でした。開発・運営の現場サイドでは「これ炎上する可能性あるよなあ」って感じで、前もってある程度炎上した場合の対応まで考えていたような気がするレベル。
初めからコイン周りの改修も考えていたなら、アペンドスキルの追加を発表したあの場で「絆レベルアップ時に獲得できるサーヴァントコインの量をアップ!」も発表していたでしょうし。合わせて「現在開発段階で、コイン増加に関しては後日となります、申し訳ありません」くらいまで言えばなんの問題もないわけですし、そもそも「アペンドスキルを付け替え可能になる」というのもそのプログラム組んでおかないと簡単には発表できない話でしょう。
用意はしていたけど発表しなかった=炎上騒動にならなければそのまま寝かせておいた、というように見えてしまうのもまた事実。

ともあれ対応は迅速だったとはいうものの、今回のようなことをやってくるという前例ができてしまったのが非常に痛いところです。
今までジャブジャブ課金していた層にこそ強い警戒心が生まれてしまったはずで、ちょっと今後はFGOに課金する額を抑えよう、あるいはしばらく課金そのものをやめようと考えるようになった人は結構いるのではないかと思います。
スマホゲームの課金、プレイヤーが運営に対する信用があってはじめて踏み出せる部分でもあると思いますから。長期的に見ると売上落ちますよ、こういうの。

構造的に同じだなあと思ったのが、ウマ娘で以前起きた俗にいう「三女神事件」。
新しい育成シナリオが実装されてから1ヶ月ほど経った頃に、時間差でその新シナリオ特効のサポートカードを実装してくるということがあってかなり炎上しました。
結果何があったかというと、少なからず多くの人がその後のガチャで警戒するようになってしまったんですよね。間接的に売上が下がることに繋がっていると思います。というか、潜在的に今でもちょっと警戒するもんな、ウマ娘ガチャ。「いや、この後強えサポカ出すんじゃないの?今のガチャ回さない方が良くね?」みたいな。

YouTubeのコメント欄でチラッと見たんですが「後から運営がゴールポストの位置を変えてくる」という話。
例えばウマ娘の三女神事件なら、新シナリオ実装当初は「シナリオリンクはありません」と発表しておきつつ、1ヶ月後に「シナリオリンク付きの編成しないと育成もまともにできないレベルのサポカ」を実装してきたわけです。
今回のFGOで言うと、前もって「新しいアペンドスキルの追加はない」……という話はなかったものの、逆に「今後さらに追加する予定がある」という話もなかった。そこにきてサプライズ的に実装してきた一方で、それを獲得するための敷居がやたら高いという状態になっていました。「新しいアペンドスキル」というゴールポストを設定するなら、それに合わせてグラウンド全体の調整(アペンドコイン周りの改修)をしないといけないんですがそれをしなかった……というところでしょうか。
露骨に金銭的な意味でゴールが遠くしようとしたのが、極めて印象が悪い一件でした。


リリースから9年という長期作品なため、ゲーム部分の基礎はその9年前に構築されたものですから、ぶっちゃけそこまで奥の深いものでもない。
結局FGOのコアの部分はストーリーとキャラ愛にあって、しかも今回のアペンドスキルやサーヴァントコインに関しては「好きなキャラのためなら高額課金する」みたいな人ほど不利益を感じるようなものだったので……忌憚なく言うと、9年もやってきて経営サイドがユーザーの遊び方を理解できていないんだろうなっていうのが伝わってしまうというか。
……やっぱり会社の内部というか、子会社化したことの影響なのかなあ。FGOの売上を支えているユーザーの遊び方を理解していない人が介入した施策としか思えないんだよなあ、これ……。