心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【FGO】奏章2「不可逆廃棄孔 イド」クリア後感想

今回はタイトルにあるように、主人公の精神深くにある、これまで倒してきた敵のネガティヴな思念の残滓が蓄積する場所……廃棄孔がテーマ。
以前からその廃棄孔で、人知れず蓄積する負の情報を焼き続けてくれていた巌窟王と廃棄孔のお話になるかと思っていたのですが。

……いや、まあそういう話ではあったんですが……。
なんというか、ストーリー全体を見返した時にその「廃棄孔」の要素が出てくるのが最終盤といっていい局面だし、今回のラスボスも微妙に小物感。
どちらかというとメインは完全に「アヴェンジャーというクラス」を掘り下げたものであり(アヴェンジャーとは何か、ではない)、そこに設定的に最重要クラスの廃棄孔案件も入れ込んで詰め込みすぎた結果、ストーリー全体としてのバランスやら細かいところの粗を感じてしまうお話でした。
ちなみに評判自体はネットを見ている限り賛否両論という感じですが、ストーリーそのものの内容含め個人的にはあんまり……という結構否寄りの立場ですかね。
とりあえず色々と書いていってみますが、まあ見落としたり間違った解釈していたりする部分も多いと思います。というか、読み返したらほとんど不満に感じた点しか書いていないので、イドが面白かったという人は読まない方がいいです。

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独特の文章とテンポを悪くする大量の選択肢コマンド

ストーリーの内容そのものの前に、とにかく気になったのはこの2点ですね。

一部では「ポエム」なんて揶揄されていたりする今回の文章ですが、まあこれが苦手でして。以前書いたけど、おそらくオリュンポスやツングースカと同じ方がメインのシナリオライターだったと思われます。
敵として登場する試練が、戦闘前に口上として発する「我は◯◯!怨讐の〜」みたいな長々したやつはまあ歌舞伎の見栄を切る際のセリフみたいなもんだからいいとしても、それがちょいちょい地の文においても発生してくるのが正直キツかった。
ずっとそんな調子なので、不必要に文章のカロリーが多いというかなんというか……。まあ簡単に言うと疲れるし、そうやって回りくどい長い文章を読まされますが、内容的には大したこと言っていないか、そもそも別に意味がないようなパターンが多いです。
志賀直哉のように最低限の文章量で、最大級に美しいと思わせるタイプの文が好きな自分的には相性がとにかく悪いですね。
あと微妙に気になるのが「ーーけれど。」のような一文の多用も少し引っかかる点。このような目を引くタイプの同じ一文を多用してくるので、全体をイメージした際に同じ表現が何度も出てくると、文章的に薄っぺらく感じるんですよね。これが文章全体に漂うくどさの一因でもあるだろうし、もう少しなんとかならないのかね、とは思います。
セリフはそれぞれのキャラクターの個性や癖を表現する場所なので、同じ表現が多用させるのは問題ないと思うんですが、地の文でもそれをやってくるのがまたなんとも。そもそもその地の文も、主人公が認識している主観的な視点であるのか、それとも客観的に第三者が俯瞰で見ている視点なのかも曖昧な部分も多いという。そういうのも読みにくさの一因でしょうか。

書いている人はもちろんこれを生業にしているプロの方ですし、素人が何言ってんだって感じかもしれませんが……どうも表現が一辺倒だから、読んでいて平坦に感じてしまう文章です。文章そのものは派手な修飾がされた書き方なんだけど、それをコピーしたかのように何回も使ってくるせいでむしろマイナス印象。メリハリがないといいますか。

最大の問題は選択肢の過剰な多用です。

このような選択肢が今回のイドでは狂ったように出てくる。
ここで(頷く)を選択しようものなら、その都度画面が少し上下する「主人公が頷いた」演出が入ります。
一回や二回ならまだしも、こういう選択肢が異常な量用意されていたのが今回のイド。チリも積もれば……で、これがとにかく多いので、とにかく文章を読んでいてリズムが悪い。
どっちを選んだところでストーリーに変化はないので、少しでもテンポが崩れないように途中からはとりあえず画面が動かなさそうな方を選んでいる自分がいました。(首を横に振る)とか(足元の影を見つめる)とか(目を逸らす)とかはなんか避けてたよね。ただでさえ膨大な回数こういうの選ばされることで地味にストレスがかかるので、視線動きそうな選択肢は選ばないようになるというね。

主人公の「怨讐」

ではストーリーの方。
今回は突然東京で暮らす学生生活にぶっ込まれる主人公ですが、途中で突然母と妹、そして家族同然に仲良く過ごしていた後輩のキリエの命を何者かに奪われることになります。
これで主人公の内面に強く復讐心が生まれて……みたいな展開だったんだけど、まずその母・妹・キリエの3人に対して、プレイヤー視点ではそこまで思い入れがない。外見状のガワがダヴィンチやマシュではありますが、彼女たちがイコールで主人公の本当の家族や後輩ではないことも状況的に明らかです。
その辺を加味すると、これによって主人公が復讐心の炎を燃やすところの温度感について行けないんですよね。メインストーリーの方では、2部冒頭で速攻ダヴィンチの命を奪われたり、7章ではムニエルが一回命落としているレベルの惨状が発生しているわけですが……その時よりやたら憤っていることがよく分からなくてねえ。
一応「この世界での主人公は精神的に幼くなっている」みたいな話は途中で入ったので、それによって感情的になっていた可能性はあるんですが……じゃあそんな精神が未熟化している主人公に対して、あの試練ぶち込んだの?みたいな別の問題も出てきます。その状態で与えられた試練、正常な判断を主人公はできていたんでしょうか。

アヴェンジャー達の決断

今回、最終的に主人公が征く道には自分達のような昏い怨讐の炎はあってはならない的な理由で、アヴェンジャーの皆さんは自らカルデアという船を降りる決断をするんですが……これが個人的には、そういう終わり方にしちゃうのか……感。
これで今回のメインヒロインであるジャンヌオルタとの別れの物語を描けて、ラストシーンはそれっぽく終わったんですが……正直、安易に用意された感動シーンという受け取り方をしてしまって、むしろちょっと冷めてしまいました。

そもそも復讐心だって、人が人であるが故に生まれる感情じゃないですか。他の動物は自分の子供が食われたりしても、復讐を考えたりはしないわけで。その炎自体は否定するものでもないと思うんですよね、あくまでも個人的にはですが。
「地球白紙化によって奪われた未来を取り戻すための戦いに、復讐の心を持ち込んではいけない」ってのがよく分からなくてね。そんな単純な話じゃねえだろ人間って、みたいな感じ。色々な感情や想いが絡み合いながら世界を取り戻すもんじゃないんですかね。復讐心も混じった心で奪われた世界を取り返すの、そこまで悪いことですか?
ストーリーの展開的にも、アヴェンジャーというクラス自体を人理は認めたと思うんですが、それはそれとして巌窟王が「我々は未来のために戦う主人公と共に征くわけにはいかない」と言い出して、なぜか他のアヴェンジャー達もそれに納得してしまってまとめてカルデアから去りました……みたいな話なので、いい話風に終わったけど個人的にはあんまり納得していません。というか主人公は納得してはいない感じだったし。(首を横に振る)選択肢出たしな。
しかも「自分たちは共に行けないけど、代わりに自分たちの影を置いていきます」みたいな話で戦力としては残るっていうよく分からない方法を取るという。
メタ的な話をすると、例えばジャンヌオルタが大好きで課金しまくって宝具5にしました!みたいな人は、今後ジャンヌオルタがストーリー的に活躍する機会は失われたことを意味しているのでテンション下がっても仕方がないと思う。さらに今後別タイプの新しいジャンヌオルタが実装される可能性もほぼロスト。というかアヴェンジャー組が軒並みそう。
ガチャでキャラを引かせるゲームで、しかもそうやって引いたキャラ愛を最重要視しているゲームデザインでこれやるんだ……ってちょっと思いましたよ。アヴェンジャーだけがこれを喰らってるのも印象悪い。
……まあ、これ最終章で復活というか、結局助けに来る的な展開は与えそうな気はしますけどね。
今後完全新規のアヴェンジャー実装されるたびになんか気まずそう。実装されたとしても、巌窟王によってアヴェンジャーが共に行くことを否定されちゃったから、設定的にはやっぱり最終決戦にはついて行けないってことになりますし。

色々粗い

ストーリー的にも雑な部分が結構あるように感じます。
奏章1では「アルターエゴとは何か」について語られたので、今回は「アヴェンジャーとは何か」を語るのかと思っていたらそういう観点での話はほとんどなかったので肩透かし。まあこれは勝手にそう思っていただけなんですが。

ラッパがなると人は全てその姿を消し、サーヴァントと主人公だけが残る……のかと思いきや、キリエや天塚先輩はその世界に存在してますし。
「現実世界でサーヴァントの姿をしている人は残るのか?」と思ったら、スカサハの姿をしている叔母さんは消えるしでこの辺の意味もよく分からない。
そもそもマンドリカルドと刑部姫に至っては、何のためにあの姿で登場したのかすら分からない。多分意味なんてないんでしょうけど。

今回の新サーヴァントである耀星のハサンも、長いことかけてようやく主人公を認め、仮契約をしたかと思えばすぐ退去。
プロローグで「お前……未来からやってきたのか!」みたいな登場をしてましたが、退去後はエピローグまで一切登場しないまま終了したので割と空気。
マリーアントワネット・オルタもせっかくサーヴァントとして実装されたのに、こちらも出番は少なめだった気がします。カリオストロとの関係性を描くなら、いっそのこと耀星のハサンのポジションにマリーオルタを据えるなり、途中からしっかり仲間に加わるなりさせたほうが良かった気がするんですよね。
ピックアップ1のほうで実装されたサーヴァント2騎が、ストーリー的にはちょっともったいなかったかなあという感じです。

全体としてサプライズ的な演出をしたかったのか分かりませんが、色々唐突だったりするか説明が足りなかったりするのもなんだか。
最後の試練直前になって、突然それまで一緒に戦ってきたジャンヌオルタ、サリエリ、景清が「一緒には行けない」だけ言って去っていくのもねえ。その理由を「言えない」理由もあんまり分かりませんし、これ。

廃棄孔に関しても「今回で現在蓄積していた分は焼けたから、これから最後の戦いまでの分は足りるやろ」みたいな希望的観測で済ませているんですが、本当にそんな感じで大丈夫なんすかこれ?
根本的な解決にはなっていませんし(まあ根本的な解決するには、白紙化地球を元に戻すしかないんだけど)。今回巌窟王がいなくなったことで「廃棄孔に悪性情報を送り込みまくる」のも一種の敵側の戦略として機能するようになってしまった気がするんですけどね。

よく言えば考察の余地が多くて面白いって話になるかもしれないんですが、どっちかというと説明不足っていう方が正しいんじゃないかと思います。
フロムソフトウェア作品のそれとは違うんですよねえ……。

不満ばっかり書いてすみません

ということで長々と書いてみたら不満だらけですね、これ。
文章が苦手なのも、アヴェンジャー達の結末も、詰まるところ個人的に合わなかったっていうお気持ち表明でしかないので、一応書いたしブログにアップするけど良くねえなあこれ。
メインストーリーはどうしてもそれなりのクオリティを求めてしまうので、ついこうなってしまいます。

個人的には、どうしてもナウイ・ミクトランがすごく良かった反動で奏章が微妙なんですよね……。
次の奏章3のテーマはルーラーのはず。ホームズあたりの伏線回収でも行われるんでしょうかね。