心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【ウマ娘】ネオユニヴァースのシナリオ最高ですね……

並行世界を観測できる不思議なウマ娘ネオユニヴァースの物語。
その内容は、ウマ娘のいる世界そのものの根幹に迫るようなものだった。トレーナーとネオユニヴァースの関係性自体もすごく良かったけど、ウマ娘というコンテンツそのものの世界観に迫るような内容だったので割と必読かも。
性能的にも悪くはないですが、それ以上にウマ娘キャラゲーとして楽しんでいる人なら確実に読んだほうがいいやつですね。

実際の競走馬・ネオユニヴァースの存在自体をストーリーにしっかり組み込んだ力作。特にデムーロ騎手とネオユニヴァースの関係を知っているような競馬ファンなら、普通に号泣するレベルのストーリーだと思う。ネオユニヴァースのことはほとんど知らない自分でもグッと来たし、その後デムーロ騎手とネオユニヴァースのエピソードを調べて育成中のいろんなイベントに付合することがたくさんあって、ちょっとたまらない気持ちになった。
Twitterで書いていた人もいたけど、ウマ娘版の映画「インターステラー」と言えるような壮大なSF作品です。

以下、ネタバレも含みつつ育成シナリオの感想など……。

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ネオユニヴァースはとにかく扱う言語が難解。分かりやすい範囲だと肯定を「アファーマティブ」、否定を「ネガティブ」と表現。喜びの感情は「スフィーラ」、ほかにも「REVE」「ANOI」「REEN」などのアルファベットのみの単語を多用。
ということで周囲の人とのコミュニケーションがとにかく取れないんだけど、本人は『コネクト』……つまり繋がりたがっている。
そこに現れたのがトレーナー。言葉の意味は分からないがそのニュアンスはなんとなく分かるので「君は繋がりたいんだな?」という感じで専属トレーナー契約です。
ちなみにこのネオユニヴァースのキャラクター設定自体、デムーロ騎手がネオユニヴァースの欠点を質問された時の回答「欠点は人間の言葉を喋れないことくらいだ」から来ていると考えられる。そしてデムーロ騎手曰く「騎手が必要ないくらい頭が良い」馬だったそうで。そしてこれ自体が割と伏線になっているのがまた。

そうして二人三脚で走り出したトレーナーとネオユニヴァース
何回な言語は高度過ぎる知性が故。そう思っていたが、それだけでは説明できないことが起き始めた。ネオユニヴァースは未来を予知しているのだ。
菊花賞を観戦した際、10番人気のヒシミラクルが勝つと予測したネオユニヴァース。可能性ではゼロではないが、人気順からすると可能性は低い……だがヒシミラクルネオユニヴァースの予言通りに勝利する。

ネオユニヴァースは未来を予知している……その疑惑が高まる中、ついにネオユニヴァース自身から明かされるのは、自分は未来を見ているのではなく「別の世界を観測している」ということ。
そして、その世界の『ネオユニヴァース』は天皇賞・春の後に「消える」。ライバルであるゼンノロブロイネオユニヴァースが消えて一人になり、下の世代から現れる“大王”と“特異点”に飲まれてしまう。それがネオユニヴァースが観測している世界だった。

基本的には観測している世界の通りに進んでいるのが、ウマ娘世界のネオユニヴァース
つまりネオユニヴァースは、天皇賞・春の後で自分自身が「消える」ことを恐れていた。
博識のゼンノロブロイの協力も得て、一つの仮説に辿り着くトレーナー。ネオユニヴァースゼンノロブロイや“大王”“特異点”といったものは観測できていて、ネオユニヴァース自身だけを観測できない。それは「できない」のではなく「見たくない」からでは……と。
乗り越えるために見たくないものと向き合ったネオユニヴァース。それは天皇賞・春の後に故障し、そのまま走れなくなる……それが「消える」ことの正体だった。

別世界のネオユニヴァースの故障に気が付かなかったのは、意思疎通ができなかったから。よってトレーナーはよりネオユニヴァースとの対話を通じて、理解しようとしていく。
運命の天皇賞・春を終え、そして……夏合宿を無事に乗り越えた。観測していた世界の「GATE」を突破したのである。

それまで観測できていなかった世界へと踏み出したネオユニヴァース
ゼンノロブロイや他のライバル達との戦いの中で「自分はなぜこの世界へ?」という疑問が生まれた。

その答えは……。

デムーロ騎手にこそ読んでほしいですね

ウマ娘世界におけるネオユニヴァースのトレーナーは我々の現実世界におけるデムーロ騎手と対応した人物。

最後にネオユニヴァースが導き出した結論は、この世界に来た理由はトレーナーである『あなたと過ごしたかった』だけ。
史実では天皇賞・春の後で故障し、わずか4歳で引退となったネオユニヴァース
デムーロ騎手は「僕が一番愛した馬」と評した。
ウマ娘ネオユニヴァースは、その愛に応えるためにこの世界にやってきた。道半ばで終わってしまった別の世界。その先をこの世界で、トレーナーと共に歩むために……。

もうほとんどデムーロ騎手に対してのネオユニヴァースからの愛のお返事状態なんだけど、実際のネオユニヴァースが故障によって短い現役競走馬時代を終えたことに対する、ウマ娘がもつテーマなりの回答を示した物語なのかなと思います。
サイレンススズカナリタブライアンなんかは割と分かりやすいけど、ウマ娘は史実では道の途中でつまづいてしまったり、あるいは故障でそのまま終わってしまったりした競走馬の道の続きを描いてくれるんですよ。
もしスズカが天皇賞・秋で故障せず、そのまま走り続けていたら。
もりナリタブライアンが故障によってその力を失うことなく、さらにビワハヤヒデとの兄弟対決が実現いていたら。

ネオユニヴァースもこの系譜のストーリー構造だとは思うんだけど、そこにデムーロ騎手との関係やエピソードがほとんど直球で組み込まれているので、なんというか解像度がすごいというか。
競馬ファンならニヤリとするような場面がたくさん散りばめられていった先に、エンディングは別の世界で自分を「一番愛してくれた人」と一緒にいるために、その愛に応えるために「ウマ娘としてトレーナーと出会った」……で終わる。
「本能や憎しみは次元を越えられない。愛だけが越える。越えさせてくれる。」
ネオユニヴァースのこの言葉が実に良い。
「愛が2人を引き合わせた」は、ネオユニヴァースのシナリオだからこそ相応しい結論なんだよね。
引力、すなわち愛!!


競走馬とその関係者や騎手に対する敬意も感じられつつ、パラレルワールドの存在にも触れることでウマ娘のいる世界そのものの意味の一端にも触れられるようなトップクラスにいいシナリオでした。
映画「インターステラー」を観るとネオユニヴァースのシナリオへの理解度もかなり増しそうなので、機会があったら改めて観てみようかなと思います。