心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

プーチンの演説、まあ頷けるところもあるんだが……

先日のプーチンの演説のあと、プーチンを擁護する人が結構な勢いでツイートしていて結構怖くなっているんですよね。
動機や理由がどうであれ、物理的な侵略戦争を仕掛けて多くの命を奪ったという事実だけで僕は擁護できないんですけど……。

とはいえ、プーチンウクライナ侵攻という手段に至ってしまった背景や、それこそ演説内で語っていたことの一部に関しては理解もできる。
だからこそ難しい話なんだけど、個人的にはプーチン侵略戦争を仕掛けたこと自体が敗北を認めたことになると思っているんですよね。
ということで以下長々と持論で語っていきますので間違いも多々あると思いますが、ご容赦ください。歴史が好きなので、そういう観点を多少加えつつ……。

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「西側が……」という言葉は、演説の中で何度も出てきた。
要するに自分達というかロシアは被害者であり、こうやってウクライナを攻めるに至った原因はアメリカを中心とした西側諸国にある……というのが基本的なプーチンの言い分です。そしてこれは実際にある程度は真実でもある。

第二次大戦後にアメリカが中心となって生まれたNATOという組織は、ソ連を中心とするワルシャワ条約機構に対する牽制的な意味合いもあって設立されました。
この構造がモロに冷戦って感じはするけどね。資本主義のNATO社会主義ソ連
結局ソ連側に編入されたくない西側諸国は、NATOという実質的なアメリカの庇護下に入ることでソ連から自国を守れたし、何よりそのパワーバランスのお陰で実際の戦争は起きなかったわけです。

ただし近年の動きが問題で、そうやって以前はワルシャワ条約機構編入されていたロシアに地理的に近い国家がどんどんNATOに鞍替えしたり、他にもNATOに加入したいという国が続々と出てきたのです。というか、個人的にはウクライナが侵攻された原因の最後の一押しが「ウクライナNATO加入に現実味が出てきた」からだと思っています。
ロシアからすると隣国がアメリカ側のNATO編入するという地政学的な恐怖心。
そしてそもそも、NATOは当時それ以上拡大しないという約束をしていたのにも関わらずどんどん加入国家が増えて拡大を続けたこと。
プーチンからすると「約束が違うだろうが」となるのは、まあ分かるんだよな。

ただ……。
はっきり言ってしまえば、直接的な戦闘を伴わない「冷戦」という長い戦争に、ソ連が敗北した結果としか言えないと思うのです。
西側と東側の綱引きの中で、その間に揺れたヨーロッパ諸国の多くは「アメリカに従った方が自国のメリットが大きい」からNATOが拡大した。その際に裏では色々な工作もあったでしょうけど、それも含めて冷戦。結局ソ連という国家が、冷戦という時代に自国側でアメリカ以上のメリットを提示できなかったから、NATOは拡大を続けたわけで。当たり前の話だけど、アメリカよりソ連にくっ付いていた方がウマいとなれば、自国の益になるから東側に残り続けた国家ももっと多かったでしょう。
ソ連から歴史的に地続きのロシアは、社会主義経済の失敗でかなりヤバかったところをプーチンがなんとか立て直しました。
この経緯があるから、本来プーチンがその矛先を向けるべきなのは国家の舵取りを失敗して、アメリカを中心とした西側諸国に遅れをとった過去の指導者の皆さん……ということになると思うんだけど、すでに過ぎ去ったことで攻めても今が変わるわけではないからね。
なんというか、プーチン旧ソ連プーチン以前のロシアまでの大量の後片付けをさせられている立場でもある気はする。そしてそれは現実的にはもはや不可能なのにそれをやろうとすると、選べる手段が極端なものしかないというか。
歴史的には一人の人間がトップのまま長期政権が続くと、どうやっても暴走する傾向にあります。それを防ぐための任期制なんだけど、ロシアの場合は実質それが機能していないというか……。そういう長期政権からくる部分と、今の追い詰められたロシアをなんとか立て直すための極端な手段とが結び付いてしまった感はある。

ウクライナ侵攻を決断させるほどにロシアを追い詰めた状況は、確かに西側諸国が生み出した。
ただしそれで手を出しちゃったらやっぱりダメなんですよ。侵略戦争だけは許されなくて、その手段を選んだ時点で被害者面はしてはいけないと思います。


ちなみに演説、今後のロシア国内の政治運営について語っている時間がかなり長かったです。
まあ割といいこと言ってたんですけどね。ただ、それ全部本当に実現できるのかな?という感じもかなりありました。
あとあの会場にいて、プーチンの演説を聞いていたお偉方の皆様。モチベーションみたいなものはほとんど感じられない表情に見えたし、ロシア国内でのプーチンの求心力はやっぱり落ちてきているように思います。
戦争ってそれだけで経済的には莫大な赤字を垂れ流す事業で、それが当初の計画とは違って1年経ってもまだ終わらない……となるとね。開戦に踏み切ったプーチンの責任って、そういう観点から見てもかなり大きいんですよ。
ずっとずっと昔、2000年以上も昔。孫子がすでに「戦わずして勝つ」ことを説いている。これはこういった金銭的・人的な国家資産の損失も含めての話だと思います。


最後に……。
プーチンを支持する方々の中には、ディープステートの存在を前提に話を進める人が結構多い。
トランプ大統領だった時代に、彼がその存在を言い出したことで火が付いた陰謀論。その存在自体は可能性は確かにありそうな概念だけど、結局どこまでいっても今のところは陰謀論。個人レベルだったり、超デカい企業が国家運営に裏から一枚噛んでいるということは正直どこの国でもある話だとは思うけど、それを「闇の政府」なんてレベルで一つの組織立てて語るのはいささか誇大に過ぎるのではないかと思います。
そんなディープステートとプーチンは戦っているのだ……と話は繋がるんだけど、それがウクライナを攻撃する正当性にはならないと思うんですね。それをいうならそのディープステートを直接叩いてねって話でして。
「そういう闇の勢力からウクライナを解放しているんだ」という論理展開も見るけど、それが事実だとして、操られているだけのウクライナの国民の命を奪っていることに正義はなくないですか?目を覚ましてあげるために戦っているのに、目を覚ましてあげるべき対象をそのまま攻撃しているっていうのは話が通らない気がしますね。