心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

光る君へ 第9回「遠くの国」感想

今回は物語においてどこかトリックスター的な立ち位置だった、直秀を中心に展開しそうな回。
散楽の演者としての表と、貴族の家から物を盗む義賊としての裏。
そしてただの民衆の一人という表と、偽りとはいえ一時的に道長の弟として振る舞った裏。
こうした二面性などは、いわゆるトリックスターの定義に当てはまるキャラクター性かなと思います。

しかし紫式部が主人公ということで放送開始前はどうなるかと思っていましたが、始まってみると良い意味で予想を裏切られていて面白い今作。
今のところ全然浅い繋がりですが、これからエゲツない政治闘争の世界に紫式部も入っていくことになるわけで……これからどうなっていくのか。
そしてお互いにそんな政治の世界の中で、紫式部道長の交流はどうなっていくのか……。

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道長の心情を察するになかなかキツいなあ。
捕えられた直秀は痛烈な貴族批判を展開しますが、道長・まひろとの交流は直秀にも何か感じ入るものはあったはず。
貴族の内情を探るために道長と繋がりを持っていたにしても、それ以上の情はあったはず……と道長的には思うのではなかろうか。こういうところで共に打毱をしたというのが沁みますね。

右大臣邸に賊が侵入したという話は、左大臣家の女子会でも話題にあがります。
この女子会も女子会でなかなかややこしいことになっているような気が。まひろは道長といい感じですが、一方で倫子と道長が結婚する話も進行中……。

まひろもここで初めて、散楽のメンバーが実は盗賊だったことを知ることになります。
しかし運が悪いですねまひろ。たまたま様子を見に行ったら散楽の皆さんの住まいを訪ねたところを捕えられるというね。
直前に道長が袖の下を渡していなかったら、すぐ解放されることはなかっただろうなあ。

「あなたが許していれば」はいくらなんでも、まひろさんが道長の立場を理解していませんな。
道長の周囲が地獄ですね。身内を含め誰も信じられないのに、その権力の重力の外側にいるまひろと直秀くらいしか信じられる者がいないの、生きてて疲れそう。
ちょっとメタ的な話ですが、捕えられて初めて「直秀」とたくさん呼ばれている気がしますなあ。

急に素っ気ない態度になっているまひろ。
これまたすれ違い。ここ2話くらいでまひろの心情に変化があったことを知らないから、道長からしたらシンプルに「なんか冷たくねえ?」という感じだろうな。

やっぱりこれ、あれだよなあ……。
兼家による「道兼を花山天皇に取り入らせる」という謀略にしか見えなくなってきました。
この後道兼に嵌められて出家することになるのを知っていると、この流れはなかなかですね。
そもそも嫌われている右大臣家の次男を花山天皇と結び付けるストーリーとしては上手い展開のように思います。

藤原実資のちょい面白パートを挟みつつ、いまだに眠っている兼家に「旅立て」なんて言っていたら……やっぱり倒れたところは本当だけど、病自体は偽りでしたか。
うわあ!兼家と安倍晴明の間で凄まじい謀略が!!
はじめから全て兼家と安倍晴明の思惑で動いていたということですか。
道兼、父親に協力するために自身を傷付けていた。うーん、こうやって「父の役に立つこと」だけを拠り所にして生きている感じが物悲しい。
先日母ちゃんと大河の話題になったんですが、物語を俯瞰で見たときに一番可哀想な人物は道兼という話で一致しましたよ。

直秀たち散楽一座、無罪放免でも流罪でもなく、全員処刑という事態に。
いや……これは何故こうなった?特に道長から賄賂を受け取った彼、こんなことしたら右大臣家との今後の関係性が最悪になって自身の将来も暗くなると思うんですけど……え?
後からTwitterで色んな人の意見を読んで納得しましたが、これは逆でした。「本当は鞭打ち程度の罪だけど、あいつらは右大臣家を馬鹿にするような演目をやっていたんだから……分かるよね?」という風に検非違使側が解釈してしまったと。いわゆる忖度ってやつですが、これが悪いベクトルに動いてしまったみたいです。辛いなあ……。

スコップなんてない時代だから、全員手で穴を掘って埋葬。
道長が判断を誤ったから、この結末を招いてしまった。道長が抱える強い罪悪感を感じるシーンです。
やはり一番問題だったのは「金を渡したから」なのか。そもそも「検非違使に引き渡した」からなのか。それら含め全てなのか……。

今回の話キッツいなあ……。
直秀達が旅立った「遠くの国」が冥土を指していたとは。予告の時点ではなんとなくどこかに旅立って終わりだと思ったんだけどな……。

さて、兼家と晴明の謀略は進行中。
宮廷で起きているいろんな不気味な現象、実際には晴明が人為的に仕込んでいるだけなわけよね。
当時の人はこういうオカルトを本当に信じていたんだろうけど、その裏には「そんなもん信じてねえわ」どころか「一般人は信じていることを利用しよう」という、今回のドラマでの兼家や晴明のような人間が暗躍していたんだろうなあとは思います。
時は戦国になるけど、織田信長なんかもそういう人物でしたよね。桶狭間の戦いに挑む直前の熱田神宮のエピソードとか、火起請のエピソードとかは分かりやすいですね。


次回「月夜の陰謀」。
ついに花山天皇が出家か。兼家と晴明が織り上げた謀略の糸も、ついに一枚となって完成する時が迫ります。