今月初め頃のカラパイアの記事なんですが、イギリス・エクセター大学で「魔術・オカルト」の学位が取得できるようになるそうです。
「魔術・オカルト」という名前だけでは卒業後に役に立たなそうですが、これを単体で考えるのではなく、それらが社会・心理・経済などにどのように影響しているのか……みたいなアプローチで学ぶとすると、結構身になる分野だと思っているんですよね。
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魔術やオカルトを信仰するのではなく、それを学問として冷静な目で見ることには一定の意味があると思っています。
カルト宗教などに取り込まれないためには、逆説的にそれらに対する正しい知識がある程度必要です。
ミクロな観点から言えば、そのような抵抗力を付ける一助にもなりそうだと思います。
歴史的な視点で見れば、実は現代に至るまで魔術・オカルトの類は切っても切れない縁があります。
かつての日本では怨霊信仰が根ざしていて、平安時代などは疫病が流行すればそれは怨霊の仕業だと本気で考えられていたわけです。国家公務員として陰陽師が存在した時代が確かにある。
戦国時代になっても、軍師の仕事には暦を見て進軍日時や方角の吉兆を占うというものがありました。実際の戦況を踏まえた現実的な判断も含まれていたとは思いますが、それでも吉兆からアプローチするというのは魔術やオカルトの分野とも重なるように思います。
世界に目を向けると、1692年にはアメリカ・セイラム村で魔女裁判が行われました。16〜18世紀の間には、アメリカやヨーロッパで多くの魔女裁判が行われたようです。
悪魔崇拝者と断じられた多くの人の命が奪われたわけですが、これも内面では魔術・オカルトに対する恐怖心が存在するが故に発生したパニック現象。当時の人の多くはどこかでそれを信じているからこそ、このように魔女裁判が世界各地で起きたのでしょう。
1800年代に入ると、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーという女性が登場します。
ヘレナ・P・ブラヴァツキー - Wikipedia
世界のさまざまな宗教と神秘主義を内包した、マハトマと呼ばれる魂による真理の獲得を目指す近代神智学の創始者の一人ですが……この人が現代に繋がる、大衆向けオカルティズムの起源とも考えられているようですね。
ちなみにFGOでは「エレナ・ブラヴァツキー」の名前でサーヴァントになっていますが、こちらは小柄で可愛らしい女性になっています。……あの世でヘレナ女史はどう思っているんだろう。
現代になっても、カルト宗教のような社会的に害をもたらすものだけではなくエンタメとしても魔術・オカルトは消費されています。
「月刊ムー」なんかはその典型例かもですね。自分のように本気で信じてはいなくても、ある種小説やドラマ、漫画やアニメのようなフィクションとして楽しんでいる層というのはそこそこいると思います。そういう観点から見た時、今回の「魔術・オカルト」の学位というのは、エンタメとして消費されるそれらをビジネスとして解釈するアプローチにも有効なのではないかと思ったりするわけですね。
こうやって見てみると、人類史というのは魔術・オカルトという分野が密接に関わりながら発展してきました。広義で言えば錬金術とかもちょっとその領域に足を突っ込んでる気がしますし、ウイルスや細菌という存在が認知されるまでは人類は本気で呪いなどのせいだと考えていたわけです。
科学など各種学問の発展により魔術やオカルトが完全に廃れたのか……というとそうでもなく、先に書いたようにエンタメとして消費されるものもあれば、現代においてもカルト宗教などの形で悪影響を与えるものも存在し続けているわけです。
エクセター大学のカリキュラムでは「近年の民間伝承への関心の高まりを受け、世界中の魔術と魔法の歴史、呪術が社会と科学にどのような影響を与えているかを探求する」とのこと。
魔術・オカルトを触媒にしながら、歴史や社会学などを包括的に学ぶことができそうな気配。というか、むしろ他の分野をある程度修めた人の方が有益な分野な気がします。
この「魔術・オカルト」の学位取得の中で学んだことが、自分の本業において実はどのくらい影響を受けていて、さらには正しく活かすことができるのかを考えるとかなり応用が効きそうな「学問」だと思います。
……とまあ長々と書いてきたけど、本当に言いたいことは一つ。「なんか面白そうだな」ですね!