心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

時給1500円がいかに馬鹿げた政策なのかを書いてみる

選挙に向けて各党が色々政策掲げてますが、一部野党が訴えている最低賃金アップ、特に時給1500円についてはツッコむところしかないレベルで破綻しているので書いときたいかなと。
素直に「時給1500円とか最高や!支持する!」と思っちゃってる人、自分で調べたり考えたりする部分抜け落ちてますし、はっきりいうと騙されてますので目を覚まして。

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雇う側からしたら地獄

時給1500円。これだけ聞くととても素晴らしいんだけれども、この時給1500円を支払う企業側の立場になって考えてみましょうか。
ざっくり東京近郊で現在時給1000円前後かなと思うので、キリよく現在時給1000円として色々考えてみましょう。いろんな経費とか税金とかは一旦置いといて、単純に計算してみる。

例えば10人アルバイトを雇っている会社があるとする。時給1000円だから、1時間あたり1万円。これをさらに労働時間で倍がけするから、例えば6時間シフトで考えたら6万円ですな。営業日は毎日人件費でこのくらい支出が出る。
これ時給1500円になった途端、15000×6。9万円になるわけですよね。毎日の支出がコンスタントに3万円増えるってエグいですよ。

ここで企業としての人件費支出額を変えずに、かつ時給1500円を成立させる方法はいくつかあります。
単純に雇う人数を減らす。例えば上の例だと10人を7人に減らせば、時給1500円でも105000円になってダメージは軽微だね。
あるいは一人当たりの労働時間を減らす。6時間労働のところを4時間に減らすと、時給1500円のまま支払い続けることができるね。

……分かりますかね?
安易に一気に時給上げたりしてしまった場合、失業者が増えるし、それを免れた人も時給制で働いている人は収入減る可能性があるんですよ。
時給上がっても企業の収益が同時に増えるわけじゃないので、人件費に支払えるリソースは基本的に変わらない。そうなったら企業側は、企業自体を存続させるために首を切るしかない。そういうことまで考えて言っているのかっていう話。

そもそもこれには実例があって、少し前に韓国で最低賃金を30%アップした結果失業者激増したというデータが存在している。実際に起きたこの実例だけで説明十分だと思うんだけどなあ。

給料上がったら物価も上がるぞ

真面目に時給1500円を目標にしている政党、インフレって知らないんですかね。
時給が上がるだけで世の中の物価が変わらないと勘違いしているんでしょうか。そうやってお金が増えたら使うようになるから「こりゃ高くても売れるで」という感じで世の中の物価も時給に沿うように適切に上昇します。だから期待しているほど一気に生活楽にはならんと思う(今よりは楽にはなるだろうけど)。
ちなみに上に挙げたように労働者が減り、労働時間も減るってことはあらゆるものの生産ペースが落ちるわけなので、需要に対して供給が追いつかなくなりさらに物価は上がりやすくなるでしょう。

そしてこんなことしたら、コントロールできないようなインフレが起きる可能性もあると思うんですね。極端な例だからそうはならないだろうけど、ジンバブエハイパーインフレのようなことも実際あったわけですから。
インフレは良いことですが、コントロールできないインフレは今の不況以上にヤバいんでね。

上の話と関連すると、そうやって時間差的に景気は
上向いていくとは思います。韓国もそうだったみたいで、そんな景気回復の流れもあって一度落ちた失業率なんかも改善傾向らしい。
ただ「一回失業してる」んだよね。これ成功って言うんでしょうか。一回失業した人がまた働き口探すの、結構大変よ。
年間3%程度の比率で賃金を上げていくと、そういうリスクも少ないのではないかという説もあるらしい。自分は時給が上がっていくこと自体は否定していなくてむしろ歓迎ではあるけど、重要なのはそのスパンと計画なんですね。「何年かけてどのくらいのペースで1500円を目指す」っていう具体的なビジョン掲げてない時点で机上の空論なわけ。
本気で時給1500円を考えるなら、数十年単位で計画立てて、他の経済政策も並行して調整・管理しつつ経済を注視し続けながら行わないといけないほどの大事業なんだけど。

MMT理論で補えるって話もあるけど……

国際的には「既にずっと前から日本はMMT実践してるようなもんだろ」という意見もあるみたいですが……。

MMT理論というのは、めちゃくちゃ簡単に言うと「自国で通貨が発行できる国は、いくら金刷っても破綻しない」というようなもの。日本は国債という形でとんでもない借金を抱えているけど、これ別に他国から借りているわけではない=返す必要がないので、いくらでも新しく金刷ってばら撒いて、インフレ調整しろ的なやつですね。その金で時給1500円にしたり、消費税廃止を実現しよう的なね。

まあ分からなくはない。本当にMMT理論が“正しいならば”素晴らしい話です(これも発行するお金の額ミスるとハイパーインフレ起きるからリスキーなんだけど)。

ただちょっと疑問があって、国際的に見た時に円という通貨に対する信用なくなるんじゃないか?というのが一つ。
「金ねーなー、とりあえずもっと刷るか」みたいな感じでポンポン金を刷るような国のお金信用できますか?円ってその価値変動制だし。「1ドル=○○円」のレートが日本の金刷る気まぐれで大変動してたらやってられないと思うんだけど、他の国からすれば。

あと実情にも少し疑問があって、MMT理論の大きな目的って「それによって経済がインフレする(というかインフレ率をコントロールする)」という話だと思うんだけど、んじゃ日本はなんでインフレしてないの?っていう疑問が残る。日本はMMT理論を実践しているって論者はこの辺どう説明してるんだろう。各種税率が蓋をしている的な話になるのかな?

そもそもMMTが正しいかも分からんのに、国家規模でギャンブルしてどうすんのとは思う。今以上に国債バンバン発行するってのがMMT理論支持者の話なんだろうけど、そこまでいくともうどうなるか予想の範疇超えてると思うんですよね。
そんなことに国民全部巻き込む気か?という話。

まとめ

MMT理論に関しては自分の知識も全然薄いため間違っていることを書いているかもしれない。特に海外からみた円の信用価値の話とか。とはいえ少なくとも上の2点「失業者が増える」と「物価も並行して上がる」は、実際に時給1500円にすればまず起きることだと思う。

というか、そういうことに頭が回らないような経済政策を掲げている党が実際に経済政策したら終わるんですよ。物事には良い面と悪い面があって、大事なのはむしろ悪い面に対するケアだと思うんだけどそういう観点抜け落ちている時点で個人的には論外なわけです。

真面目に時給1500円を目指す政党があるならそれは素晴らしいんだけど、現状どこの政党も支持を稼ぐために大口叩いているだけで、中身が伴っていない「時給1500円」という言葉。
これではとても責任ある言葉とは言えないし、そもそも出来もしない政策で支持を得ようというのは国民に対する詐欺だと思っているので、結構憤りも感じております。本当に国民のことを舐めてるのは与党と野党、どっちなんすかねえ?

はじめにも書いたけど、今時給の大幅アップを政策に掲げている一部野党に関して言うと、少なくともその経済政策については信じてる人完全に騙されてますよ。
まず出来るわけがない。無理矢理実行したところでむしろ日本経済は壊れる。それが時給1500円という政策です。