心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

歴史を軽視する大河ドラマ

今年の大河ドラマを半分観てきたところで、自分なりに一言で表すとタイトル通りの「歴史を軽視する大河ドラマ」となる。

世界一よくわかる幕末維新 (祥伝社黄金文庫)

世界一よくわかる幕末維新 (祥伝社黄金文庫)

先日放送されたやつでは生麦事件がうっすら描かれ、薩英戦争に至っては触れてないと言っていいレベルだった。
同じように「主人公が体験していない出来事は基本的に描かれない」ものに真田丸が挙げられると思うんだけど、そのシステムに意味があるのが真田丸で、別にないのが今年の西郷どんかな、と。

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真田丸の「関ヶ原」には意味があった

真田丸では関ヶ原の戦いがだいぶ端折られたというか、確かドラマ的には数十秒で終わったと思う。
この「関ヶ原があっという間に終わってしまった」ことは、史実として真田家にとっても大事件だった。だからドラマとしても「あっと言う間に関ヶ原が終わった」のは意味を持つ。

関ヶ原の時の真田昌幸としては「この規模の戦いは絶対長引くから、それに合わせて立ち回り考えよう」だったはず。
それがまさかの半日で決着が着いてしまったから、真田としては大パニックだったはず。ちなみに黒田官兵衛もパニックだったはず。
ドラマでも関ヶ原があっという間に終わったことで、真田家の気持ちが追体験出来る部分があった。「え?関ヶ原の戦いもう終わったの?」は視聴者の感想であると同時に、真田昌幸・信繁親子の感想でもあった。


で、今年の大河です。
薩英戦争が数十秒どころか、薩摩から届いた手紙によって「終わった」ことだけ伝えられた。始まったことすら知らないまま。
これがドラマとしてどういう意味を持ってるのかな、どういう効果を狙っての演出なのかな、と考えると、何も思いつかないんだよな。強引にいけば主人公・西郷吉之助が時代から取り残されている状態なんだけど、そんなことはなく結局薩摩に戻ると最前線で動き出す。

いっそ西郷・大久保のダブル主人公くらいにしてしまえば、大久保利通の若い頃の話として歴史の事件に触れられるのにねえ……とか思ったりして。

「気がついたらヒーロー」西郷吉之助

ずっと観てて引っかかるのが、まあざっくりいうと劇中では西郷さんは特別何もしてないんだよね。「島津斉彬の側に仕えていて、気に入られていた」だけで薩摩の大有名人になっているのが意味わからんという。

この点だけではなく、今年の大河ドラマの傾向として「流れがない」が挙げられると思う。言い換えると仕込みが薄いっつーか。
寺田屋騒動の時がいい例で、騒動そのものを描いたシーンは凄く迫力もあり、壮絶な場面だった……んだけど、そこに至るまでの有馬新七やら登場人物の掘り下げが全然足りないのがマイナスに響いた感じ。ちゃんと幼なじみが立場や思想によってすれ違っていくのを描いていれば、深みが出たと思う。


総じて「西郷隆盛と幕末を舞台にしなくても良くね?」みたいな部分が目立つなあって。