心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【ウイスキー】ガイアフロー蒸留所、ちょっと騒ぎになってます(9/3追記)

地味に自分もいつか、何かしらの問題は起きると思ってはいたんですよね。ということで現在の蒸留所が雑に乱立しまくっているジャパニーズウイスキー業界からの話題。
そうやって数がバンバン増えるということは、その分だけいわゆる「ダメな蒸留所」が出てくる可能性も増えるわけです。それはウイスキーの品質だけではなく、お客様に対する対応とか誠実さとかそういう面も含めて。

ただ、よりによって今回騒ぎになっているのはそんな新しい蒸留所の中でもかなりメジャー所であるガイアフロー静岡蒸留所。
クラフトウイスキー業界の中でも大手蒸留所と言えると思うんですが、そんな蒸留所からネガティヴな話題が出てくるのは結構ショックです。

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ボトリング問題

今回問題になっているのはプライベートカスク
これは1樽単位でウイスキーを予約・購入できるというサービスです。100リットルで985000円也。

で、これがウイスキーとしてある程度熟成されたタイミングで樽から瓶に詰めるわけですね。
ここが今回の問題点。これまで700ml入りのボトルだったのが、今後500mlのボトルに入れ替わるそうです。今ある700mlのボトルの在庫がなくなったらこれは強制的に行われるそうで。

ボトル1本あたりのボトリング費用は同じ。ちなみにボトリングには別途お金がかかります。
その上で700mlから500mlにボトルは小さくなる。つまり1樽あたりから取れるウイスキーのボトル数は「増える」。つまりボトリングにかかる総費用は「増える」わけです。
こうなるとプライベートカスクを持っている方の金銭的負担が単純に増えるんですが、ガイアフローさんの公式サイトではこれを「小分けでいいので、より多くの方にお渡ししたい!」というオーナーの皆さまからの要望に応えた対応としています。本当にそんな声が多くあったんですかね?ウイスキーが好きで飲んでいる個人的な感覚としてはちょっと考えにくいんですよね。

Twitterで状況を追っていると、そもそも1ヶ月前にボトリング費用が上がったという話もありました。そこに立て続けにボトリングでの改悪ときたら、少なくともプライベートカスク所有者からの印象は最悪でしょうね。
「ふざけんな」と思っても、既に100万円近く支払って所有者となっている場合は苦々しい思いをしながらボトリングを頼むしかないわけですし。この状況って結構な苦行だと思う。「もう二度とカスクオーナーなんてやらねえわ」と思っても、既に買っちゃった樽だけはなんとかするしかない。金額が金額なだけに、今回の対応はさすがに問題があるんじゃないの?

そろそろクラフトウイスキー業界も淘汰モード突入ですかね

あまりジャパニーズのクラフト蒸留所に興味がなかったため人並み以上の情報を持っていなかったんだけど、今回の一件をきっかけにガイアフロー蒸留所の情報を集めてみると……作られるウイスキーのクオリティはともかく、それ以前の一企業としての部分で色々と問題点の多そうな蒸留所だなあという印象が。
今回の一件の前から、ちょいちょいネガティヴな方向で話題に上がることはある蒸留所だったらしいです。

例えば今回のボトル変更の話も、オーナーさんへのメールでの通達などはなく公式サイト内のブログで一方的に通知されただけだとか。
これなんかは、企業としての誠実さや基本的な対応の仕方に疑問がある。ボトルのサイズなんて樽のオーナーとの契約的な話でもあるんだから、本来は各オーナーに対して個別に連絡が行かないといけないレベルだと思うんですね。もっというと一方的に「変わります」って通達しているのがおかしくて、オーナーの皆さんとお話しないとダメでしょ。
社会人としての基本的なところというか、そういうポイントでおざなりになっているように見えます。

そもそも700mlのボトルの用意が難しいなら素直にそれを謝罪する方向で話を進めればいいのに、変に「小分けボトルを望むオーナーの声に応えた」とか書くから「別に望んでないんですけど」という反発も産む。ウイスキー=700mlのボトルというのが現在のワールドスタンダードだと思われるので、むしろウイスキーを樽単位で買うような愛好家なんて700mlのボトルの方を望むと思うんですけどね。
今回のお話を多少深読みすると、ウイスキーには「エンジェルズシェア」と言って熟成中に樽の中身が減る現象が起きます。木製の樽の呼吸や気化などで減ると言われていて、周囲の環境でもその量は変動するから1樽から取れる最終的な量は分からない。
なので、例えばエンジェルズシェアの量が大きく最後の中身が少なかったら結構変わってくるわけですよね。700mlで10本しか取れなかったとしたら、500mlなら14本にできる的な。多くの人に配りたいって話ならまあ有効ですが、最低限700mlか500mlかはオーナー側が選べるようにしておかないとさあ……という感じ。
先に書きましたが、700mlのボトルの用意が難しいんならそれを詫びる文脈だったら今回の炎上もなかったでしょう。世界的に瓶不足なことも酒が好きな人なら理解していると思いますし。

もっと辛辣な意見もTwitterで見かけました。
そのツイートを書いていた人の行きつけのバーのマスターでしょうかね?「ガイアフローは素人の道楽の延長だから、そのうち行き詰まるよ」と言っていたという話。以前にも別の問題も起きていたそうで、こうなってくると信憑性が出てきてしまいますね。

ここ数年で日本のウイスキー蒸留所の数は爆発的に増えました。自分の感覚では、増えすぎたと言ってもいい。
こうやって活性化するのは嬉しい一方で、やはりウイスキーに詳しい人やそれを生業にする人からは粗製濫造の懸念なども出てきてはいたんですよね。

今回の話はウイスキーそのものの品質の話ではないですが(ガイアフローに関してはウイスキーは美味しいという話は見ますから)、飲む人のこと、自分達にお金を落としてくれる人の方を向いていないんだな……と思われても仕方がない対応かなと思います。というか100万円単位で個人でお金を使ってくれるオーナーさんを軽視しているように見えるんでね、今回のお話。
少なくともこの一件を知っていて、今後「100万円払ってプライベートカスクのオーナーになろう」と考える人は減ると思います。結局ビジネスとしても、カスクオーナー制度を先細りさせる結果になっているように見える。
うーん、大丈夫かガイアフロー。


個人的には、そろそろジャパニーズウイスキー業界も淘汰の段階に入りつつあるんじゃないかなあと思います。つまりそろそろビジネスとして立ち行かなくなった蒸留所が、段階的に畳んでいき始めるんじゃないかと。
正直な話、ウイスキー作りを舐めてる蒸留所も結構あると思うんですね。最低でも3年は熟成させないとウイスキーとして認められない上、その3年熟成程度では深い味わいを出せないことも多々。だからこそ以前飲んだ厚岸には「3年熟成でこれェ!?」と驚かされたわけですが……。
「流行っているからお金になりそう」みたいな安易な気持ちで始めたら確実に失敗するし、逆に「ウイスキーが好きでたまらねえ」みたいな熱意だけで初めても経営的なスタートダッシュの難しさで破綻しそう。
「蒸留所を作ること」自体はお金さえあれば割と簡単にできちゃう感があるのがタチが悪いというか、色々勘違いして設立された蒸留所もいくつかあるんじゃないの?とは思っています。そういうのは長く保たないでしょうね。


そもそもジャパニーズウイスキー、熟成年数に対してお値段が高すぎる問題。
新しい蒸留所はゼロからスタートするので、ウイスキーとして販売できる3年が経つまでの間はただランニングコストを垂れ流すだけの大赤字運営になるはず。その部分を補填したいというマネタイズ的な反動もあるのかなとは思いますが、ただウイスキーが好きで飲んでいる人間にとっては「3年熟成のウイスキーが15000円」とか流石にしんどいんですよね。物珍しさで価格が釣りあがっちゃっている感覚であって、実際の香りや味わいにその金額に釣り合う価値があるのかを考えると疑問符が浮かびます。
元も子もない話ですが、じゃあ山崎12年飲みます……って話になっちゃうわけで。そんな山崎12年も大人気ゆえに買えず、バーくらいでしか飲めませんけどね。

今のクラフトウイスキー熱狂時代、個人的には深入りはせずに「見」という感じ。ウイスキーの雑誌などでも日本のクラフト蒸留所を特集組んで取り上げたりしていますが、自分は結構冷めた目線で眺めています。そもそもスコッチの方が好きってのはあるけど。
そんなクラフトウイスキーの中でも、大手のガイアフロー蒸留所で今回のような問題が起きたことで、その思いは強くなってしまいました。
本当にいいウイスキー蒸留所なら、今後も丁寧に作り続けて未来に残るでしょう。それこそ秩父蒸溜所が好例。「イチローモルト秩父10年」を発売できたということは、単純に10年間評価の高いウイスキーを作り続けてきた実績があるということでもある。そしてウイスキー作り以外の面でも大きな問題が起きておらず、企業としてもちゃんとしていたという証左でもあります。
やっぱりウイスキーにおける「10年」の年数表記は、単純ですが分かりやすい指標だと思います。正直そこまで残ったような蒸留所のウイスキーを飲めば良いかなって。何年も先の話になっちゃいますけどね。

現在乱立する日本のウイスキー蒸留所。
それらの中から「10年」の年数表記ができるようなウイスキーを販売できるような蒸留所がどのくらい残るのでしょうか。あるいは今ある蒸留所のほとんどが、そうやって10年を発売できるくらいに素敵な蒸留所なのか。
ちなみにガイアフローは2016年にウイスキーの製造を開始したそうです。果たしてガイアフローの10年ものは出てくるのか……まあよっぽどのことがない限りは出せそうですが、人気は下火になってそう感はあります。正直調べれば調べるほど、ウイスキーの味以外の分野でいい話が全然見つからないんですけど……。

追記(2023/9/3)

9月1日付けでガイアフロー静岡蒸留所から、プライベートカスクについての正式な情報公開がされましたのでリンクを貼っておきます。
この記事も憶測で書いている部分もあったし、誤った情報だけ載せているのは良くないですからね。

当ブログで書いていて、ガイアフロー側からの発表と齟齬があったところを確認・訂正させて頂きます。

まずカスクオーナーへの個別連絡について。
このブログではメールなど、個別の通達がなかったらしい旨を書きました。ただガイアフロー側の発表では、問い合わせに関しては個別にメール対応を行っているとのこと。
ただしメールが届かないケースもあるので、ガイアフローの公式サイトでの告知を正式な発表としているとのことでした。

次にボトリング関連。
当ブログにおいてはそこまで書いてはいなかったけど、どうも「ボトリング本数を増やすことで利益を稼ごうとしている」という話も流布していたらしいです。
ボトリング費用の値上げは各種資材代金・工費の各原価の値上げに伴うものです、とのこと。まあつまり悪質なお金稼ぎではないという回答ですね。
自分もこれに関しては「金儲けのためにボトリング費用を上げてるんだろ」とは思っていなかったものの、お客さんからすれば実質ただの値上げであることも事実ですからね。ちょっと微妙なところですが、もっと早い段階で値上げの理由も説明していればよかったんじゃないかなあと思ったりしました。

ボトリングのボトルを700mlから500mlに変更する話について。
「原酒の減りが少ないのを、ボトル本数を増やすことで誤魔化そうとしている」という誤った情報も流れていたようです。
これに関しては「ボトル容量を減らしてでも、ボトル本数を増やしたい」という要望がカスクオーナーから度々あった、と改めてガイアフロー側から説明がされた形です。
自分もこのブログ内において「そんなに小分けにしたいっていう声があるもんかね?」と疑問視していましたが、実際にはそこそこそういう声もあったってことですかね。これに関しては自分も間違った情報を書いていたということなので、お詫びいたします。

一方で廃止予定だった700mlボトルでのボトリングを、今後も正式に存続させることに決定したようです。結局700ml、500mlの選択制ってことになるんですかね。
こうなるとなんだか話がややこしくなるといいますか。「ボトル本数を増やしたい」というオーナーの声に応えて500mlのボトリングに変更することにしたけど、それを発表したらカスクオーナー側から「700mlのボトルなくすなよ!」という声が上がったので700mlの方も継続することにしました……ってことなんですかね?
そもそも存続できるってことは、自分が想像していた「ウクライナ情勢もあって700mlボトルの安定供給が難しいから、500mlに切り替えた」という話がなくなってしまいました。700mlも引き続き用意できるけど、500mlだけにするつもりだったってことになっちゃう。
はじめからカスクオーナーがどちらか選択できるようにしておけば、今回の変な炎上もなかった気がするんですけどね……うーん。

Twitterを見ているとどうもガイアフローの社長と直接会話してやり取りした方がいたらしく、その時にカスクオーナーとして色々と話をしたようですね。
その影響もあってなのか、今回ガイアフローとしてのプライベートカスクに関する情報発表、そして何より700mlボトルの存続という結果になったような。


正直ガイアフロー側の発表も、こちらとしてはその裏付けが取れないので、どこまで正しいのか不透明な部分もあるのでなんとも言えないというのが本音。ここまでの流れを知っていると全部手放しで信じきれないんですよね……。
具体的に「ボトル本数を増やしてほしい」という意見が、カスクオーナー全体のうち何%程度あったのかみたいなデータも欲しいなあとか思ったりします。

あとは消費者に対しての情報公開が少な過ぎたり、あるいは後手に回りすぎて余計な油を注いでいる感。
今回発表されたキャンセル料金、カスクオーナーへの連絡、ボトリング費用に関するお話などなどの説明。
これら全て、それぞれが消費者側から色々言われる前に説明していれば誤情報の拡散そのものが起きなかったと思うんですね。

なんというか、ガイアフローさんは基本的にお客さんに対しての情報公開が下手な感じがすごいです。
自分たちにネガティヴな余計な憶測を生まないためにも、もっと情報を積極的に公開していった方がいいように思いました。
ユーザーが分からない場所で、分からない理由で値上げだのボトルのサイズ変更だのが行われていたらやっぱり不安感募りますって。
根本的に、企業として広報部門に力入れた方がいいんじゃないのかなこれ。正直今回の発表の文面についても、一方的に自分たちの言い分を並べただけになっています。こういうやつってはじめに「お騒がせして申し訳ございません」みたいな定型文でもいいから付くもんだと思うのですが、そういうのもないですし。
ウイスキーの味以外のところでどんどんブランドイメージが下がっているのは、蒸留所としてもマイナスでしかないと思います。