心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

べらぼう 第37回「地獄に京伝」感想

さて、タイトル的にはどう考えても山東京伝先生が主役。

前回は恋川春町切腹、世を去りました。
松平定信の政治に対する強烈な、風刺を超えたレベルでの諫言に近い行動。それでいて豆腐に頭をぶつけて……という演出を自ら行った、戯作者としての意地も見せた見事な散り際です。

とはいえ史実を踏まえればこれで定信が懲りたのかというとそういうわけではないわけで、ここからも倹約地獄は続きます。
そんな中で山東京伝が何をするのか……。

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春町先生を失った蔦重、さすがにがっくり。
しかしおていさん、強い女性です。そうですね、春町先生がこの結末に至るきっかけとなった本、その出版に踏み切ったのは蔦重だし、それを止めなかったおていさんもまた……。
そして松平定信も一人悔やんではいます。

こうして実際に春町が最大級のペナルティを受けたことで、武家出身の作家さんが作品を書かない、書けない風潮。
そりゃ最悪命に関わるとなると、筆も折りますよ。

ここで町人出身の作家として山東京伝の出番。
でもそんな京伝も一回お咎め喰らってるぜ!……というところで今回のオープニング。
しかし蔦重の「これで黄表紙の火が消えちまってもいいのか?」ってどこに向けた言葉なのか。ぶっちゃけ山東京伝個人のレベルでは、黄表紙の火より自分の命の方がずっと大事じゃない?

おっ、U字工事!そのまま栃木の豪商、釜屋さんの役っていう。
歌麿先生の一点モノの作品の注文です。これ値段もすごそうですね。

「遊びとは生きる楽しみだ」
蔦重のこの言葉、地味に大事なのよな。それこそこういう「生きる上での遊び」の部分がないと、ストレスの逃げ場がないので人は壊れますよ……。

一方松平定信の暴走が酷い。
「いざという時が起こらないように」という思考がもう終わっている。
「遊ぶところがあるから人は遊ぶので、遊ぶところをなくせばよい」は地獄の提案だわ、定信。
厳しすぎる定信の倹約令によって、吉原も存続の危機か。

「お二方とも、どうか書かないでくださいませ!」
はおていさん魂の言葉ですね。
蔦重の高すぎる志に対して、所詮ただの本屋じゃねえかよ……はまあ事実ですね。
京伝、歌麿の前で過去最大の夫婦喧嘩勃発である。
感情の蔦重、理性のおていさん。本来なら二人揃ってバランスのいい組み合わせなわけですが、ぶつかり合うと逆に最悪かもしれない……。

おっ。これは……?
歌麿の話が、京伝に火を点けるのか?この人へらへらしている風に見えて、本質は真面目ですからねえ……。
んで二人が提案した作品案、全然ピンと来ていない蔦重である。なんかこの人、作家の自主性はあんまり尊重していない気がしますね、うん。基本的に「自分が作って欲しい本」を作らせるから。合致すればプッシュするけど、それあくまで「合致すれば」ですからね。

松平定信は大奥にまでも厳しい倹約を強いるようで。
さすがにやり過ぎて、全方位から嫌われつつあるな……。
「悪をなくせるとは思わぬ方がよい」
「己の物差しだけで測るのは危うい」
ここまで言われたところで、逆に「春町先生のために自分の信じることを為さねばならない」になるの怖過ぎだろ、定信。あなたの信じる道によって、春町先生は腹斬ったんじゃねえの……?

京伝と歌麿の合作、リアリティのある吉原の描写が「花魁の幸せを願う作品」というような形として結実。
全然蔦重が笑ってなかったので怖かったけど、これは単純に「自分の物差しでは面白いか分からなかったから」でしょうか?
この状況でみの吉を読んで、第三者の感想を聞けるのは蔦重と松平定信の差かもしれませんな。

さすがに一橋治済、ここまでくると松平定信のこと邪魔になってきている気配。
「こっちはいつでも辞職する覚悟でやってんだよ!!」
な定信、こうなると逆に手が付けられないというか。めんどくせぇな定信……。

蔦重作の黄表紙、全然面白くないっぽくてちょっと笑う。
そして山東京伝、蔦重のところとは別口で仕事をしていた!それどころかその内容は定信の政治を肯定するような中身だった!

ここで山東京伝が正論言ってるのがねえ……。
蔦重、もう「松平定信に抗う」ことが目的になっていることに自分で気が付いていない。
「面白ければいいんじゃねえですかねえ」はその通りだし、そして「定信政治に迎合した内容でも面白い作品」は、そのまま定信治世でも「たわけられる」ってことですからね。
へらへらしていた山東京伝が、ここにきて「蔦重の元では今後一切書かねえ」と宣言したの、かなり大きいと思います。
松平定信も周囲の心が離れていっていますが、蔦重もまた同じことが起き始めています。

今回のお話、蔦重も定信も似たような描かれ方をしていましたね。上手い脚本だなあと思ったりして。


次回「地本問屋仲間事始」。
このタイトルはなんだ?と思ったんですが、あれでしょうか。株仲間的なやつを、地本問屋で正式に組むのかな?