心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

べらぼう 第34回「ありがた山とかたじけ茄子」感想

前回の打ちこわしの中で、新之助を失ってしまった蔦重。
この影響もあるのか、蔦重は何か強い決意を持って動き出すようですが……。

一方で幕府サイド。こちらはこちらで一橋治済と田沼意次の戦いが最終局面でしょうか。
そしてここに絡むのが松平定信。正直、本作のキャラクター性の中で数少ないちょっと苦手人物が定信で、現状は民のこととか一切考えている感じがなく、ただ田沼を追い落とすことしか考えていない視野狭過ぎ人間なのが気になる。
今後の定信が成長してくれればいいんだけど、この流れだと蔦重に対する敵の配置なので、露骨に悪役にされそうでね……。

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蔦重、食べ物に毒を盛られる可能性すらある事態です。
そのくらい幕政……というか、田沼意次と繋がり過ぎたってことですね。報酬もたんまりです。

打ちこわしから1ヶ月後、松平定信が老中首座に。
うーむ、こうなると意次贔屓の蔦重は面白くない……ですが、なんだか市中は松平定信大人気の気配。「吉宗の孫」というストーリー性や若くして政治手腕があるといったあたりのお話、どうにも小泉進次郎氏に近い何かを感じますね。

うむ、蔦重の妻はさすがに鋭い。
打ちこわしを治めたのは意次ですが、その打ちこわしの原因を作ったのも意次である。なるほど……。

松平定信の、冒頭で書いた気に入らないところが早速出てきた。
贅沢を行うことを「田沼病」なんて呼称している部分が余計なんだよね。それがなければ、政策自体は現実に即した悪くない話ではあるんですが……。
とはいえそもそも面白おかしい書籍の販売で身を立てている蔦重からすると、徹底した倹約による人生に遊びのない暮らしは否定するべき姿でしょう。
ていさんが眼鏡外した後「なんで眼鏡外すんだよ」はちょっと笑ってしまった。

蔦重は田沼贔屓。松平定信は反田沼の先陣も先陣。
倹約思想に反対して、贅沢な本を仕上げようと計画する蔦重。
そんなところに大田南畝が登場。松平定信の幕政批判をした狂歌を評価したことで罰せられる可能性が出てきたことで、もう歌を詠まないと言い出して怯えています。

徹底した田沼派への攻撃。このまま行くと蔦重も見せしめの処罰対象になる可能性が出てきたわけですか。
おていさんは一度店を潰しているだけに、ここで「田沼意次贔屓のスタンスを割り切ってやめないと、耕書堂が潰れるぞ」と現実を叩きつける。
「店を守るため」というなら、たしかにおていさんの言い分が正しいですね……。

というところで蔦重、意次に会いにいきました。
田沼幕政の資本主義性、そこには一種の「遊び」があったんですね。その遊びがあったからこそ、吉原育ちの蔦重がここまで出世できたと。
「田沼のために、田沼の名を貶める」。それによって定信の作る世の中に抗う。
今回のタイトル「ありがた山とかたじけ茄子」、蔦重と意次のことだったんだね……。
そしてここで現代の投票による選挙を実験的に行なっていることも判明。とにかく現代人っぽい思考の人として描かれていたかな、本作の田沼意次は。

さて、田沼意次の意志を受け継いだ蔦重。
定信の政治は聞く限りは真っ当だが、厳しすぎるしはみ出した者は救わない。まあなんというか要するに「面白くない」世の中です。
これで「面白い」のは、そんな世の中を作る松平定信ただ一人。

この流れに、書をもって抗う。具体案として、政治批判の黄表紙を出版する。
そんなことをしたら幕府に懲罰喰らうぞ!と思ったら、内容は「定信を持ち上げるような内容(に見せかけてからかう)」です。
定信に対して絶妙に攻撃ですなあ。そもそも幕府を題材にすることは禁じられているが、その内容が定信を讃えるようなものでも止めるか?そういうところに定信を逆に試すような意志があるな……。
そしてこのやり方なら、おていさんも歓迎なのね。

田沼派に対してあまりに厳しすぎるわ、定信。
そんな中で蔦重のカウンター黄表紙が3冊、そして渾身の贅沢狂歌も出版です。
ここからが蔦重と松平定信の本当の戦いですか……。


次回「間違凧文武二道」。
当然ながら、出版された黄表紙は一つキーポイントになりそう。今のところは定信、単純に耕書堂の書籍のファンだけど……果たしてどうなる?