心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

追悼……ありがとう、さいとう・たかを先生

エンターテイメントとしての領域を超え、生きる上でのヒントや教訓がたっぷり詰まったゴルゴ13
その作者であるさいとう・たかを先生が先月24日に亡くなりました。……高齢であることは知ってたけど、いざこの時がくるとショック大きいですね。

自分はコンパクト版ではあるけど、今出ているものは全部揃っていてほぼゴルゴ13専用の本棚も用意してあるくらいのファンではある。
……いや、ここ数年で一番悲しいかも。さいとう・たかを先生からはゴルゴ13を通じて色んなことを教えてもらった気持ちです。
ニュースで知ってから書き始めたこの記事。色々な想いがありすぎて一本の記事になるまで日にちがかかってしまった。時間も厳守なゴルゴに怒られてしまうなあ……。

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学んだことの一番は、仕事に対するプロフェッショナルとしての意識かな。
やる気を燃料にしない、金をもらっている以上は自分のコンディションに関わらずきっちり仕事をする……みたいな考え方は、間違いなくゴルゴ13から得た考え方です。一方でオフの時も気を抜きすぎず、可能な限りベストなコンディションであるように気をつけることもまたゴルゴに学んだこと。

読めば読むほどに、ゴルゴ13がスナイパーという仕事を続けている理由が一度分からなくなった。どう読んでも「やりたいからやっている」感じではなくて、長年のその仕事で莫大な財産もあるからこれ以上狙撃する必要もないはず(まあ身を守り続けるための出費は必要だろうけど)。
それでも続けているのは「仕事だから」としか説明しようがないんだよな。

「STOCK」という作品での、ゴルゴ13に銃のストック製作を依頼された職人との会話。

「あんたにとって、プロの“仕事”ってのは何だ?やはり人生の中で、仕事がすべてかい……?」
「俺にとって仕事はすべて、じゃあない……」
「意外だな……私はてっきり……」
「すべてが仕事だ……」

行住坐臥、生きていることが全て仕事。24時間がすべて仕事。
ゴルゴのような特別な仕事をしていない我々はそこまで徹底することはないけれど、それでも仕事をしている時はちゃんと「仕事」をするということをゴルゴ13から学んだものです。

「やりたいことを仕事にする」というのが最高なんだと思っていた20代前半。
そこから人生色々あったりして、加えてその中でゴルゴ13に触れることでそういう仕事感は変わっていった。
「やりたくないことでも仕事はきっちりやる」んですよ。「仕事」だからね。金と約束と責任が関わっているからね。仕事の内容に関わらず、仕事である以上持つべきプロ意識。そういう意識は間違いなくゴルゴから学びました。

単純な金銭よりも約束や信頼を大事にすること。
相手によってコロコロ態度を変えないこと。
積極的に多方面の知識を学ぶこと。
常に不測の事態に用意をしておくこと。
ゴルゴほど極端に徹底しないとしても、ゴルゴに習うべきポイントはたくさんある。


ビジネス書としても最高級だけど、下手な自己啓発本読むくらいならゴルゴ13読んだほうがいいってくらい色んなことが詰まっているのがゴルゴ13
そういう安易な精神論じゃなくて、(そもそもフィクションだけど)常に命を危険に晒す仕事をこなすゴルゴの“リアル”から生まれる教訓は理想論から立脚した薄っぺらさがないんですよね。

ギネスに乗るくらいの長寿作品だからこそ、その中で完成されていったゴルゴ像と名言は非常に多く、良質です。
何より偉大なのが、ゴルゴ13という作品は完全分業制であること。作画は背景担当・銃器担当
……という感じで分かれていて、ストーリーもそれぞれの分野の専門家が作るから、社会情勢に鋭い視点で切り込んだ作品ができる。大きい銀行の合併を未来予知するような作品があったのは有名な話。
そして……完全分業制なので、さいとう・たかを先生が亡くなってもゴルゴ13は終わらないってことです。たかを先生の遺志はゴルゴを通じてずっと残っていく。

改めて、さいとう・たかを先生のご冥福をお祈りいたします。これからもゴルゴ13を楽しませていただくのが最高の供養となると信じて。