心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

新・餓狼伝 巻ノ五を今さら読みました

まず、発売されていたことに気がついたのがつい先日のことだったのである。
何気なく読み返していた折、そういえば新刊はいつ出るのだろうかと思い調べてみると、すでに発売されていたのである。

新・餓狼伝 巻ノ五 魔拳降臨編 (フタバノベルス)

新・餓狼伝 巻ノ五 魔拳降臨編 (フタバノベルス)

  • 作者:夢枕 獏
  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

発売されたのは、2020年10月。
これまでの全巻を読んできたような人間でありながら、半年近く知らずに過ごしていたことになる。
そして餓狼伝のことを書くと、どうにも文体が夢枕獏っぽくなるのだ。

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まず、巻ノ四から続くカイザー武藤と猿神跳魚の闘いだ。
プロレスしか知らない男が、プロレスで真剣勝負を闘う。これが熱い。
ストーリーとしては猿神跳魚の強さを見せつけるための当て馬のような立ち位置であったが、過去が掘り下げられ、深みが増したのはカイザー武藤であった。

次が、新キャラクターのマンモス平田である。
カイザー武藤の過去のエピソード内で登場した男が、それ以来何をしていたのかが分からぬまま、ここで物語に登場する。
圧倒的な強さを見せつけて勝利。猿神跳魚と同様、これからの物語に関わってきそうな男である。

スクネ流の秘密を追うマカコと、その秘密を握る姫川の闘い。
姫川がスクネ流の技である蝉丸によって、あっさりとマカコを倒す。
これまで長く引っ張ってきた秘伝・菊式を巡る物語は、ここで一つの区切りであるが、ホセ・ラモス・ガルシーアがもう一つ何か関わってきそうな気配もある。

磯村露風の教え子である京野京介も強い。隅田元丸を試合開始49秒で仕留めてしまったのである。
餓狼伝という物語の最終局面で、彼もまた一枚噛んできそうなキャラクターである。

そして、今回のメインとなるのが立脇如水と葵文吾の戦いである。
立脇如水と葵文吾。二人のそれぞれの一人称視点が交互に描写されながら、その戦いはたっぷりと描かれる。
古流武術の技術で追い詰める葵文吾と、空手で真っ直ぐに向かい合う立脇如水。ものすごい勢い熱量で一気に読み切ってしまった。
この闘いでは立脇如水の過去もたっぷりと語られ、これまた魅力的な人物になったのである。


あとがきでは「餓狼伝は最終トーナメントの準備へと動き出している」と作者は言っているのだが、その一方で翁九心なる人物が新たに登場した。
そして、この男がとてつもなく強い。松尾象山グレート巽が一目置くほどの人物であり、主人公の丹波文七が闘うはずであった梅川丈次を容易く倒してしまった。

長い長い餓狼伝という物語は終わりへと向かっているという。実際に本巻では、新キャラクターが登場する一方で、広がった風呂敷の整理に入っているような闘いもあった。姫川とマカコの闘いによるスクネ流を巡る物語の一区切り。そして葵文吾は、立脇如水との闘いの果てに、一つの“風景”にたどり着いた。

しかし読んでいると、まだまだ続きそうに見えてならないのである。
何より魅力的で、まだまだ関わってきそうなキャラクターが多い。多すぎるほど多い。
主人公である丹波文七はもちろん、松尾象山グレート巽。北辰館には姫川勉がおり、スクネ流を巡る因縁でホセ・ラモス・ガルシーアがいる。丹波文七とガルシーアとの因縁では、今回倒されてしまった梅川丈次も復活して欲しい。東洋プロレス側も、梶原年男、長田弘はこのままでは終われない。
そして磯村露風と、その弟子の京野京介と関根音。「格闘技界の征服」を目論む磯村露風の一派が、最終トーナメントに関わらないはずがない。
そこにきて闘人市場と、その勢力の格闘家であると思われる猿神跳魚、マンモス平田、翁九心の参戦である。
おまけに夢枕獏の他作品から久我重明も本格的に物語に絡んできた。
終わるのか、これは。本当に終われるのか、この小説は。


刃牙シリーズのスピンオフ小説「ゆうえんち」もあるという。
こちらも読んでみようかと思っているのである。