とりあえず最終回を迎えたので、刃牙道について少し考えてみたいと思う。

- 作者: 板垣恵介
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2017/11/08
- メディア: コミック
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すごくざっくりと言えば「志の高いテーマを土台に描き始めたものの、早い段階でそれを描くことをなげて空中分解していった作品」という印象。
「刃牙道」というタイトルからも、父親を倒すことだけを目指して闘ってきた刃牙がその闘いを終え、新たなステージ(主に精神面)に成長する物語になるのかな、なんてことを考えていたりもしたんだけど……。そんなことはなかったのである。
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宮本武蔵のストーリー的役割
根本的にここの部分を作者自身が手綱を握りきれなかったのが問題だったのかなあと思う。刃牙道における中心人物がこれじゃねえ……。
行動に一貫性がないのがマズイですね。烈海王戦の時点で「ああ、やっぱり宮本武蔵は躊躇なく命まで取るんだね」ということを読者に分からせた……と思いきや、その後名のある格闘士達は命までは取られない。何故か手加減されていた本部さんとか、刃牙が乱入しただけで止められた花山さんとか。
その一方で名もなき警察の人々は容赦なく斬る。やるならやる、やらないならやらないで統一してくれないと「宮本武蔵は何考えてんだろう」となってしまう。
「剣を極めれば無刀に至る」と言い、それが完成前夜だと言いながらピクルを素手では仕留められないと思いきや「やっぱり刀ください」と言い出す。
刃牙道での宮本武蔵の思想は悪くないと思うのです。あの徹底的に金銭や出世という現世での欲望のために強くなったというキャラクターは、賞金なども出ないのに地下闘技場で闘っていた現代格闘士との対比としては悪くない。
刃牙の「道」を明確にするためのカウンターパート、反面教師的に動かすことは十分出来たと思うキャラ付けだった。それだけにもったいないなあと。土台は良かったのに、味付けが最悪だったかな。
武蔵以外のキャラクターもブレブレ
武蔵がそんな感じだったから、せめて周囲の人間くらいは……と思ったらそっちにも一貫性はない。
烈を戦わせ、命を落としたら号泣し、直後烈を斬った武蔵に対面したら褒める。
警察に手を出し始めた武蔵を一向に止めず、最終盤で刃牙が武蔵を止めた時に一瞬反省したかと思ったら「武蔵の身体は大事に保存する」とか言い出してやっぱり反省していない気配の徳川光成。刃牙道最大の戦犯は誰かというとこの爺さんでしょうね。
本部以蔵は守護る守護ると言いながら、何故か守護れずに何人か武蔵の餌食に。いつ守護るんだと思っていた頃にいよいよ自身が武蔵を倒すことに成功した後は、自分以降武蔵と接触する人を守護るつもりが全くない。「守護る」とは一体何を定義しているのかが不明になっていく。
主人公の刃牙もあんなに「命を取るぜ」的な発言をバンバンしておいて、武蔵との戦いの決着は徳川寒子に任せる始末。せめてキッチリ倒した上で、納得させてから還せよ。