今回もヴァンダム作品。
こちらの作品は2006年制作の映画……ですが、劇場公開はされておりません。日本でいうところのVシネマですね。
もちろん日本でも劇場公開されることはなく、パッケージ販売のみだったようです。
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あらすじ
イラク戦争でのトラウマを抱え、俗世から離れていた元軍人フィリップ・ソバージュ(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)。
そんな彼を心配した親友ボウデンの誘いで、共に実業家のウェインの護衛をすることになるが、銃撃を受けたボウデンは命を失ってしまう。
そんなボウデンの遺志を継ぐ思いもあってか、改めて護衛任務を引き受けるフィリップ。自らスカウトしたメンバーを鍛え、新たな護衛チームを結成して任務に挑む……。
という感じ。
分かりやすい往年のアクション映画プロットに、主人公は戦争帰りで心に傷を負っている要素などがスパイスになっている形でしょうか。ここまでだとちょっとランボーっぽい。
先週観た『ファイナル・ブラッド』とは違ってストーリーの線は分かりやすいですし、ウェインを狙うギャングのリーダー・テレルの動機も明快。
シンプルに楽しめるタイプの作品ですかね。
感想
なんというか、この手の王道アクションに見せかけて変なところがあって、妙な味わいを生む作品でした。
まず護衛対象のウェインが元ボクシングチャンプで、その時のファイトマネーを元手に公共事業を展開、街を発展させた人気実業家。
ボクシングチャンピオンになったレベルなので護衛対象なのにめちゃくちゃ強くて、物語の中盤でフィリップと意見が激突した結果タイマンで殴り合う場面があります。謎の青春パートである。
何より作中全体の中で一番長い格闘パートがここなんですよ。ウェインの命を狙う敵のボスとかじゃなくて、護衛対象との殴り合いが一番たっぷり描かれる不思議采配です。
そもそもこういう作品だと護衛対象がヒロイン枠の美女だったりすることが多いと思うんですが、そのポジションはウェインのお姉さんであるタマラ。
やたらフィリップの肩を持つタマラと、フィリップと妙にぶつかるウェイン。よって姉弟でもちょっと揉めたり色々あるうちに、そのタマラがギャングに捕まり人質に……。
タイミング良く登場する警察官が実は敵側に通じている汚職警官だったりとストーリーのアクセントも軽く挟みつつ、戦争によって心を閉ざしていたフィリップがタマラとの交流、ウェインとの衝突などを通じてなんとなく心の健康を取り戻していったりとかなんとか。
ラストバトルもギャングのボスと相対するのはウェインであり、殴り合いになると護衛対象のはずのウェインがボクシングチャンプレベルの腕なのでボスをボコボコにします。
ヴァンダムアクションは銃撃戦がメインで、あんまり格闘戦が楽しめないのが残念ポイントです。
ストーリーはシンプルな導線で破綻するところもなく、敵組織も言ってしまえばプロではなくただのギャング集団なので軽い味わいの作り。
……なんだけど、なんか妙に長くてダレる作品です。アクションシーンの少なさの割に2時間近くあるので、無駄なシーン多くないですか?みたいな感じが。
なくてもストーリー的には問題ないような場面がちらほらあった気がします。それこそウェインと意見の衝突があってたっぷり殴り合うの、作中で最も長い格闘シーンでありながらストーリーとしては「なんで殴り合う必要があるんだ?」というシーンでもあり、観終わってから冷静に振り返ると「変な映画だったな……」となりますね。
この映画が制作された時期のヴァンダム、どうもVシネ作品ばかりで劇場公開されるような作品に恵まれていない時期。
結果としてそんな自分自身を自虐的に演じた『その男ヴァン・ダム』として結実します。してしまいます。
ネットで今回観た『ザ・ディフェンダー』の評価を見るといい感じに低めなんですが、なんというかヴァンダムが悪いのではなく、いい脚本・監督に出会えていないヴァンダムの不運なのではないかと思います。
