「好きなことを仕事にするのが最強」理論はもはや普遍的なレベルでそこらじゅうに溢れていると思うんですけど、実際のところこれはすべての人に当てはまるかっつーと甚だ疑問である。
一年前の今頃は飲食店で料理を作っていて、絶頂期はバリバリ飲食店で深夜まで料理作ってカクテル作って接客しまくってたんだけど、今は9時から17時まででピタッと終わるデスクワークである。
飲食店時代は本当に「好きなことやってるから最高じゃん」と思いながらやっていた。そして今も料理は好きなので家でたまに作ったりもする。
だが20台後半に突入し、仏教とか学んじゃって、考え方がだいぶ変わってきた。
いくら好きなことで食っていけるとしてもだ。
その好きなことが仕事になった時に人間としての生活を著しくぶっ壊しちゃったらダメじゃん、と。
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やってみりゃあ分かる話でして、飲食店っつーのは本当に大変で。
今の仕事に就くまでは飲食店でしか働いたことがなかったので比較対象がなかったのだが、今の仕事との比較でいろいろ考えさせられてしまった。
労働量や求められるものに対して給料の割が合わない。こりゃあ好きな人じゃないと続かないし、アルバイトだらけで運営され学生がそのまま違う仕事に就くのも頷けるというもの。
そもそも「食」なんていう人間の命を預かっているような仕事なのに社会的立場が本当に一握りの料理人しか高くないですよ、的な感じは介護や保育士の置かれた境遇にも近いものを感じる(彼らよりは自身で上り詰める可能性もあるし夢も見ることができ、はるかに良いとは思うが)。
トータルで客観的に見るとストレスすげー仕事ですから、ことごとく上司がヘビースモーカーだったのも理解できてしまう。
特に私は居酒屋やバーだったので、帰りは毎回深夜になるし生活リズムなんてものはなくなっていく。
忙しい日は食事をとる時間や休憩も途切れ途切れになりまとまった休みなど取ることはできず、その状態で仕事終わって時間的に食べられるものは牛丼やラーメンばかり。
毎日のようにそんなものを夜中の2時になんて食べていたら体調が優れるはずもなく・・・まあそんな悪循環だし、だからといって食べないのは食べないで死んじゃうので結局コンビニ弁当とかになっていくし、まず飲食店に勤めている人間がまともな食生活を送れなくなってくる。
これ、身体が蝕まれていくとその次に精神が荒んでいくんだよね。
心身一如とはよく言ったものだ。
「仕事が楽しい」「好きなことが仕事」ってのは確かに幸福だとは思う。
好きなことが仕事になった時に辛さが付与されるのも分かる。だって仕事だもの。
でも好きなことを仕事にして身体壊したり人生がおかしくなるってのはやっぱり違和感が残る。
ようはそれでも「好きなことを仕事にする」くらいそれが好きかってことだと思うんですよ。ここがハードルじゃねえかなと。
やれる覚悟がある人はやるし、自分みたいにそこまで肝を据えることからドロップアウトした人は仕事と好きなことを分けて考えればいい。それは悪いことじゃない・・・どころか、極めて真っ当な考え方だと最近では思う。
とはいえ飲食店、完全にやめるってつもりもないんですけどね。やっぱりあの業界は接客もあるし、人間としての成長面では得るものが凄く多いので。
いつか自分の小さなお店を持ちたいとは思う。趣味の延長レベルで。「好きなこと」の範疇で自分を壊さないようなお店を。