日本酒を徳利で頼み、黙々と飲んでいる。
じょっぱりーー青森の酒である。
はじめは田酒を熱燗でーーそういう気持ちであった。
それが、品切れであった。
そこで、同じ青森の酒であるじょっぱりにしたのである。
じょっぱりを、冷で。
それを、飲んでいるのだ。
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/08/04
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カウンターの上には、串焼き。
モツ焼きである。
アカ。シロ。チレ。それぞれが豚の内臓であった。
アカはレバー。シロは大腸。チレは脾臓のことである。
これらは、塩で。
そして、テッポウ。テッポウは、直腸。これと、鳥ねぎまは、タレで頼んでいる。
それと、モツ煮込み。
これは、汁気の少ないものだ。どろりとした甘めの味噌味に、大振りの味が染み込んだ豆腐と柔らかいモツ。そして、粗みじんの玉ねぎが乗せられている。
そして、小さな器に、酒盗である。
酒盗は、鰹の内臓から作られることが多いが、広くは魚の内臓の塩辛である。
独特の臭みと、強い塩気が、酒を進ませる。
そんなことから、酒盗ーーその名が付けられたという話もある。
たっぷりの、モツの焼き物と煮込み。そして、酒盗。
それらをぽつり、ぽつりと食べながら、間に日本酒である。
内臓しか食べていないではないかーー
そう思う。
内臓を食べたいのだから、それで良いのだーー
とも思う。
モツ焼きなのである。
モツ焼きが食べたくて、モツ焼きのある店に入ったのだ。
そうして気がつくと、モツ焼きだけではなく、モツ煮込みも頼んでいたのである。
さらには、酒盗も頼んでしまっていたのだ。
これは、もう、内臓から離れることが出来ないのではないか。
焼き鳥よりも、遥かにモツ焼きの方が好きなのではないか。
たまらぬ晩酌であった。