心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

べらぼう 第19回「鱗の置き土産」感想

作中でもちょこちょことその凋落に触れられてきた鱗形屋、いよいよ店を畳むことになってしまいました。

“モノ”的には置き土産になりそうなものはたくさんあります。
鱗形屋が刷ってきた本の版木だったり、鱗形屋の販路だったり。
そしてお抱え絵師や作家。公式サイトによると、まさに鱗形屋お抱えだった恋川春町を巡って、鶴屋と蔦重が激突するっぽいです。

一方でドラマ的には、鱗形屋の置き土産としてはマインド的なものを期待したかったり。
蔦重は鱗形屋から、何を受け継ぐんだろう。

スポンサーリンク


開幕は幕府パートから。
知保の方の自害騒ぎです。なんとか一命を取り留めたようですが……この騒ぎそのものが仕組まれたものでした。
徳川の後継者をめぐるパワーバランスの争いがここまでのことを引き起こすんですね。この辺の泥沼感、やはり大奥なんかも手がけた脚本って感じがします。

一方で鱗の旦那、体調まで悪いみたいですね。
そして恋川春町。おそらく周囲の人からこれまで聞いてきた話から、蔦重に対する心象は最悪に近い。
まあそりゃそうですね。自分を大事にしてくれていた鱗形屋を潰した人って認識だろうし、春町視点だと。

吉原の方ではかぼちゃの親父が他界。
蔦重はゴリゴリ頑張ってきてますが、一方で市中の本屋も本屋で負けないように頑張っているようで。ここまでは蔦重がワンサイドゲーム的に勝ってると思ってたけど、そうでもなかったようですね。
春町の絵には「味」がある。それが歌麿評。

鶴屋は徹底的にビジネス主義で「流行に乗った売れる作品」を作りたい。
春町はというとその性分から、ちゃんとしたものを作りたいのが優先なので鶴屋のやり方がどうしても合わない。
なるほどねえ……。たしかに『金々先生』の原案、鱗形屋であって春町ではない。
恋川春町には絵の才覚はあれど、物語を作る才覚はないってか。

鱗の旦那からの「置き土産」。それは恋川春町を鶴屋から奪い取れという話。
春町はこれまでやったことのないことをやりたがる性分。
うわあ……良いですねこの展開は。
鱗形屋はかつて蔦重を騙して利用していたものの、その時二人で『金々先生』を考えていた時間だけはホンモノだった。
ここでちゃんと二人が協力するの、アツいですね。
そして「100年先の江戸」のプロットで恋川春町を説得だ。

知保の方の一件、しっかり将軍様の心変わりをさせるには十分でした。
うーん、なんか家治将軍はずいぶん弱腰というか。もう自分の血脈自体が呪われているとすら思っている気配です。

春町先生はいきなり鱗形屋に土下座。「盗人」蔦重のところで本を出すことを詫びますが……それに対して「なんてことを!」と言いながら笑顔の鱗の旦那よ。
やっと蔦重と鱗の旦那が顔を合わせて和解。
蔦重が初めて買った本、それを出版していたのは鱗形屋だった。その版木をプレゼントです。
ちゃんと本を通じて、鱗形屋から蔦重に心も受け継がれました。よかったよかった。

おいっ!せっかく鱗の旦那で感動していたのに!!
瀕死のかぼちゃの親父に筆持たせて、無理やり蔦重に身請けを許す書面を書かせる。


青本の番付『菊寿草』。
その中での最高ランクに『見徳一炊夢』が入っていました。
これはますます鶴屋はじめ市中の本屋がキレそう。結局出版しているもののクオリティで負けてるってことだもんなあ、世間の評判では。


次回「寝惚けて候」。
今度は蔦重、狂歌にチャレンジするみたいですよ。