心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

光る君へ 第44回「望月の夜」感想

さあ、今回は藤原道長という人物の、ある種最も有名な部分。いわゆる「望月の歌」の回となりますね。

長年「欠けた場所のない望月(満月)のように、自分の望むものが全て揃っており、この世はそのまま我が物のようだ」といった具合に読み解かれ、当時の道長が自身の栄華が極まったことを歌ったものと解釈されてきました。
近年ではその解釈に対して異なるのではないか?という研究も始まっていて、今年の大河もここまでの流れを踏まえるとそんな新説の方で話は進みそうかなと。

自分のためではなく国や民のために働き、そして今は三条天皇とも上手くいかず、家族ともなんだかギクシャク。腹心ともいえる行成も自分から離れつつあって、さらには道長自身体調を酷く崩した後。
とても一般的な解釈である「自身の栄華の絶頂を誇る歌」ではないタイミング。果たしてどうなるか。

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道長の調略の成果か、公卿全体として三条天皇に攘夷を迫る状態へ。
一方、三条天皇の方もカウンター策。自分の娘を道長の息子・頼通へ嫁がせようとする。
この時の頼通が「そうなるくらいなら、今の妻と都を出て二人で暮らす」宣言。若き日のまひろと道長そのもののこの言葉。そしてそこから道長と藤式部が月を見上げるシーンへ。なんとも……という感じです。
道長と藤式部が若き日にできなかった選択を、その子供である頼通と賢子が選択しようとしているのがちょっと苦しいですよね。「自分たちの行いたかったif」を見せつけられているというかね。

頼通が拒んだ縁談について、彰子様に相談する道長
今や国母になりつつある大きな人間となった彰子様は「誰も幸せにならない縁談なので断れ」とのこと。
しかし道長、もう娘たちからはだいぶ嫌われているというかなんというか……厳しいなあ。政治に集中しすぎて、むしろこうして政治的に子供達に上手くやって欲しいときに上手く動かせなくなっている。

おっ、三条天皇が割とあっさり譲位。この時の条件、本当に守りますかぁ……?
後一条天皇が誕生。まだまだ幼いので、摂政である道長が実権を本格的に握るわな。

まひろの方では為時さんが出家をする腹づもり。
実際この後の藤原為時の家ってどうなったのかね。男がいなくなってしまったわけで、家としては存続するのが難しい状態な気がします。

ちょっと道長の急進的なやり方、どうなんでしょうかね。ちょっと織田信長を思い起こさせます。
やっていること自体は国家のためには良いことなんだけど、そのために比較的身近にいる人たちの気持ちや考えが蔑ろになっているんですよね。
結局その辺、家族との関係性の悪化なども同じ理由だと思いますな……。「木を見て森を見ず」の逆で、道長の場合「森を見て木を見ず」という感じ。

藤式部のアドバイスはすごく大事なところですわな。
摂政を息子に譲るとして、道長の民を想う志が受け継がれていなければ……それは父や兄が行っていたような民のことは無視して、自分の家のための私欲に走る可能性はありますからね……。
倫子様、藤式部に「道長のことを書いてくれねえか」と相談に来ました。藤式部と道長が二人で話しているところに倫子様が現れるの、毎度のことだけどヒヤッとするわ。

頼通くん、摂政就任。
速攻で自分の妹を入内させようとするし、母親の倫子様も普通にそれをプッシュ。
すっかり道長の子供たちは「道具」なんだなあって。倫子様自身も途中で考え方を割り切ってしまったのが切ない。

三条天皇の人生もなかなか悲しいもんがありますね。
長い雌伏の時を経て、ようやく天皇になれたと思ったら目と耳を患い、短い即位期間で退位して人生終了。さらには譲位の条件として付けていた東宮も、三条天皇が亡くなったことで東宮を辞す。
道長の時代の天皇たち、みんな結構かわいそうですね……。

いよいよ道長の栄華という時代が来ました。
本人は摂政から身を引いているけど、息子が摂政で娘3人はいずれも天皇家の妃。
本来最高クラスにめでたい宴席ですが、周囲は楽しそうな中道長自身は全然笑っていなくて、どこか冷めた目でその様子を眺めている。

「今宵は、まことに良い夜だ」。
満月ではあるけれど、雲で薄く陰っています。その雲が晴れた瞬間……。
「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば」
この場で聞いていた皆は、今までのように「道長が自分と藤原家の栄華を喜び誇っている」という解釈だったのかなと。
でも道長の顔はどう見てもそういう顔じゃないよね。政治家として究極地点にたどり着いたけれど、その代わりに色々失ってきたものの方への悲しみを感じます。
若き日にまひろと二人で見上げた月なんだよね、たぶん。そっちが「失ってしまった月」だし、今の栄華極まる月は今がピークで、これから欠けていくのだろうというのもどこかで感じているのかもしれません。


次回「はばたき」。
なんか……急に終わりに向かって動き出したなあ。為時だけではなく、道長も出家しそう?