心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

【読書】『右園死児報告』を読みました

今年の読書の秋はホラーの秋。まあ秋といってもまだまだ暑いんですが。

ということで今回は、9/3に発売された『右園死児報告』の読書感想文です。
作者の真島文吉さんは失礼ながら知らなかったんですが、ライトノベル作家さんのようです。今回の作品はweb上で日々更新されていったものを、一つの書籍にまとめたものですね。
以前紹介した『近畿地方のある場所について』と似たスタイルで公開された感じ。ネット上で日々細かく更新されていく物語というのは、現代ならでは。
今回の場合はそれが報告書の体裁なので、よりweb更新との相性は良かったのかなあと思います。まあ自分は書籍で一気読みになってしまったんですが……。

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本書の構造としては「右園死児」なる、人物なのか物体なのか、はたまた現象を指すのかすらはっきりしない何かについての報告群……といった感じ。
序盤は本当に正体が掴めないんですが、各報告同士で関連性がところどころで垣間見えたりする中、中盤あたりで核心に迫る……というか、ほぼ解答に到達します。「右園死児」の起源であり、その本体みたいなものの討伐に至るわけですね。

ここから第二幕というか、それまでは人と怪異の戦いだったのが人と人の戦いに入ります。
これまで日本政府は、影で「右園死児」を抑えるために時に非人道的な手段すら用いてきました。そんな報告を読み続け、むしろそうやって「右園死児」に関係しているかもしれない……というレベルで無慈悲に人類を始末してきた政府や組織こそが真の敵であるとして「エツランシャ」を名乗る人物が登場、残された右園死児関係の物品などを強奪し、反乱を起こします。
彼に同調した国民は多数。民間の研究期間なども彼に従い、特殊な装備によってただの国民は戦闘員にもなれる。
そんなエツランシャが率いる反乱との戦いが報告の後半部分。


正直な話、読み終わってみて「これは評価分かれそうだなぁ……」という感想でした。
前半と後半で結構はっきりとテイストが異なります。というか別作品なのか?レベルでテイストが変化。
前半の「正体不明の存在に対して、断片的な情報が続く報告群から迫る」というような静的なホラー感。
後半の「絶望的な強さの敵に対して、残された少数の人間達が立ち向かう」みたいな動的なパニックムービーやアクションムービー感。しかもこちらに関しては、ほとんど報告書という内容ではなくなっていますし。
自分の場合はホラー作品が読みたいと思って購入し、その上で前半部分はかなり面白く読んでいただけに、後半戦は「こういう方向に話が進むのか……」という妙な気持ちではありました。
筆者さんのTwitterを見た感じ、意図的にそのつもりで書いていたみたいなのでなんとも……というところですが。

ただ、この本の内容全体を踏まえた上で「この本をホラー特集コーナーの棚で販売するのはなんか違う気がするな?」とは思いました。それこそ本屋さんでは『近畿地方のある場所について』とか『ジャパン・ホラーの現在地』などと一緒に平積みされてましたからね。
作品の後半がホラーではなくパニックアクションといった感じで終わるので、どうしても『右園死児報告』の読後感はホラーではないので。一応パニックホラーになるのか……うーん。

「どういうジャンルの本を読みたいか」の部分が明確であればあるほど、前半と後半の温度差の違いについて行けなくなる人が出そうではあります。
自分も面白いとは思いつつ読んでいたものの、後半部分に関しては「読みたいと思っていたジャンル」からは大きく逸脱していたので読んでいてそこまで波に乗れなかった部分がありましたね。
逆に前半が退屈で、後半の展開にアツさを感じる人もいるだろうなあという感じ。


最終的な感想としては「右園死児というSCPと、それにまつわる世界終焉シナリオっぽいtale」という感じでしょうか。
前半はSCP「右園死児」に関する補遺。
後半はそんなSCP「右園死児」に関連して発生した、世界終焉シナリオとそれを食い止める戦いのtaleといったところ。
SCPっぽさは前後半問わず終始感じていたので、むしろこの本を読んで面白かった人はネットでSCPを読み漁るのがすげえ合う人かもしれません。
SCP、無数の人間が膨大な作品を投稿し続けるシェアード・ワールドですからね。人によっては「右園死児」よりも恐ろしくて魅力的な怪異に出会える可能性が大です。