心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

哭きの竜を麻雀漫画として読むからつまらないんだと思う

最近「哭きの竜」シリーズを読み返している。

鳴けば上がると言われる伝説の雀士・竜を主人公に、その竜の強運を求める極道達の生き様を描いた作品。
ということでこの漫画、ストーリー的な主軸って竜の麻雀というよりも、東京の桜道会内部の跡目争いとか、そんな桜道会と西の大組織・関西共武会の抗争とかそっちなんですよ。
公式にも一般的にも「麻雀漫画の金字塔」みたいに説明されることが多いせいで、この哭きの竜シリーズに対するイメージが間違った形で形成されていると思う今日この頃。

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竜は主人公だけど主人公じゃない

ちょっと説明が難しいんだけど、間違いなく竜は物語の中心人物ではあるんだけど厳密には主人公ではない感覚。

カンでめくったドラがそのままカンした4牌に当然のように乗ったり、そのままリンシャンでツモったり。対戦相手の狙いを完全に見切っているようなシーンはあるが、基本的に竜の麻雀はテクニックとか技術、読み合い以前に恐ろしい強運で成立している部分がある。だから麻雀漫画っぽい駆け引きがほとんど作中で発生しないので、そこを期待して読んでみた人が「つまらない」と評価しているんだと思う。

先に書いたように、主題はそんな竜の強運が欲しくなった極道達。
竜の強運は近くにいる人にも伝播する(同じ卓で打っている人の配牌がめちゃくちゃ良くなったりする描写がある)。
だからそんな竜を手元に置いておくことで、自分を、自分の組織をよりデカくしたい。敵対組織を倒したい、そんな極道が竜を求めて集まる……から結果竜の周囲で抗争起きる感じ。

桜道会甲斐組組長・甲斐正三。その跡を継いだ二代目甲斐組組長・石川喬。関西共武会会長・海東武に唆された石川喬のライバル的存在・本宮春樹。そしてその弟・本宮秋生。そして……利用される側からやがてトップに上り詰めることになる三上信也。

竜は物語の中心にいるけど、竜自身のバックボーンはほぼ語られないドーナツのような構造。
加えて麻雀自体は戦略の読み合いなどは発生しないので、個人的には竜は舞台装置っぽい感じなんですよね。麻雀で対局することを通して竜に振り回されて(勝手に振り回っている感あるけど)、終わりなき抗争が続くところが漫画のメインですよ。これ麻雀がメインじゃない。ジャンルで言うとヤクザ漫画の方が正しい。

極道の悲哀がウリですよ

ってのでそんなメイン部分、つまり極道達の生き様を軸に読むと結構面白いわけ。

桜道会の中で急出世していく石川喬に対して、若い頃同じ釜の飯を食べてきた本宮春樹が関西共武会の思惑に踊らされて牙を剥く。
ここからの本宮春樹がまたアツくて、そして事の顛末を間違って解釈している弟の秋生が復讐心で石川喬に襲いかかったり……と、まあ哀しいのよ。

何故か異常に竜に固執してしまう皆さんと、結果「竜がいる限り平和は訪れない」みたいになっていくところは置いといて(竜に触れなければいいのに……)、不器用な極道達を楽しみましょう。まあ能條純一作品、割と勢い重視な部分ありますからね。理詰めで読むのではなくノリをハートで楽しむべきだと思います。