心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

「金木犀の香り」で連想するのは夢枕獏

先日Twitterのトレンドに「金木犀の香り」っていうのが入ってたんだけど、ここで夢枕獏先生をはじめに連想する程度には餓狼伝脳である。

Twitterのトレンドを眺めた瞬間、金木犀の香りが薄く空気に混じりはじめた。
実際には、周囲には金木犀はない。
餓狼伝を愛読している者にしか分からない、何か得体の知れないものが、金木犀の香りとして感じられるのかもしれなかった。

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実際に読んでみると、餓狼伝自体には金木犀の香りという文章はほとんど出てこないのである。
にも関わらず連想してしまうのは、夢枕獏小説全体から滲み出す、妖気のようなもの。
そしてネットで見た、夢枕獏風の文体で多様な人間が書き込む面白い文章。
それらの影響が大きい。

ところで、私は今日健康診断であった。
「今日は健康診断っスねえ」
「そうだねえ」
漢の心の中の二人が、会話をしている。
「いいのかな……」
「何が?」
「受付開始時間前に、健診センターに行っちゃうの」
そろりと、怖いことを片方の漢が言った。
健康診断というものは、混む。
受付開始の時間ぴったりに行っても、結局は待つことになる。その時間に行く人間は、自分だけではないからだ。
ルールによって、時間は決められている。
「いいんじゃないの?待たせられるってことは、こっちが待たせてもいいってことでしょ」
「一応時間、書類に書いてあるんスけどね」
「ふーん」
「あ、守る気ないんだ」
「バレちゃった?」
「ほら、顔に書いてあるから」
「そんなこと言ったってさ、君だって早く行って、さっさと終わらせたいでしょ」
「そりゃ、まあ」
時間前に行って、そのまま始まってしまうなら狙い通りである。
もし始まらなければーー
待てばいい。
少なくとも、時間通りに来た人々よりは先に受付が行われるであろう。
そこまで考えてのことであった。


そうして受付開始の15分ほど前に乗り込んだ漢ーー
きっちり15分待たされて、時間通りに健康診断を受けることになったのである。
センターの空気には、薄く消毒液の匂いが混じっていた。