心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

映画「藁の楯」 感想

「五人の中で一番お前を殺したいと思ってたのは……この俺だ!!」


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今更ながら映画「藁の楯」を観た。
上映していた時期に観たいと思いつつも、見逃してしまった作品。

大沢たかお松嶋菜々子藤原竜也らの豪華共演で、木内一裕の同名小説を映画化したサスペンスアクション。監督は「十三人の刺客」「悪の教典」の三池崇史
孫娘を殺害された政財界の大物・蜷川が、新聞に「この男を殺してください。清丸国秀。御礼として10億円お支払いします」と行方不明の犯人殺害を依頼する全面広告を掲載。日本中がにわかに殺気立ち、身の危険を感じた犯人の清丸国秀は福岡県警に自首する。警察は警視庁警備部SPの銘苅一基、白岩篤子ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させる。しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。

藁の楯 わらのたて : 作品情報 - 映画.com


大沢たかお演じる銘苅、清丸国秀役の藤原竜也が際立っていたかなーという印象。
「殺人犯を殺した奴は10億円手に入る」という土台から日本国民全てが敵になる、というストーリーのコンセプト自体は面白かったんだけど、登場人物たちそれぞれの掘り下げ方が薄すぎて気が付けば終わってた映画だった。

なんつーか全体的に惜しい。


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テーマとしては「善悪の葛藤」か。
清丸を警護する5人は守りながらも、「こんな殺されて当然な奴を守る意義はどこにあるのか」を自問自答していく。

一人は実際に清丸に殺された女の子の遺体をその目で見ているし、別の一人は既に裏切っており、清丸を殺そうとする人たちのサイトに情報を流していたりする。

主人公の銘苅も子供を身籠っていた妻を無免許・飲酒運転の犯人に轢き殺された過去を持っていて、内心では誰よりも清丸を殺したいと思っている。


せっかくこういったそれぞれのバックボーンがあるのに、全然掘り下げずに会話で軽く済ませて進むもんだから気持ちが乗らないというか。
アクション自体も近年の海外映画を観慣れた目には特筆するものでもないわけで、そうなると全てが中途半端な映画に見えてくるもので。


そんな中ほとんど内面など描かれず、表象された狂った面だけでキャラクターが確立される清丸国秀を演じた藤原竜也の力は相変わらずすごい。物語終盤に大沢たかお藤原竜也だけでもっと濃密な時間を作っても良かったのではないかと思う。



結局最後まで(文字通り)命を懸けて清丸を守った銘苅は、その清丸に刺されてしまうのだけれど、それを見ていた「10億あげるよ」と言っていた爺さんの心に一石を投じ、その懸賞金は取り下げることになり、なんとなーく事態は収束して、銘苅も一命を取り留め、シングルマザーであり警護中に清丸に殺された白岩の息子と仲良く歩き出して終わり、というスッキリしない感。なんか解決したのかしてないのかという。「かまいたちの夜」的に言うとベストエンディングではありませんよね、みたいな。


二夜連続ドラマあたりでそれぞれの人物の内面にもっとスポットライトを当ててリメイクすれば、面白そうかなーと思った。
……いわゆる「アクションサスペンス」を作りたくてこの作品を作ったのなら、色々なものを捨てていったのだろうなぁと思う映画だった。


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