心の雑草

「げ」と申します。心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

「クレージー・モンキー 笑拳」 感想

「怒りにまかせては、復讐は果たせんぞ」

クレージー・モンキー/笑拳 [Blu-ray]

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半ば周期的にジャッキー・チェンの映画(特に若い時の作品)を観たくなることがある。そんな季節がやってきたので、この「クレージーモンキー 笑拳」を観た。


この作品はジャッキーの初監督作品でもあり、自身が主演も務めていることもあってやたら自分の魅せ方が上手い。
改めて見直してみたが、ジャッキー・チェンの映画の中でも相当完成度が高いのではないかと思う。


ストーリーはカンフー映画定番の安心設計。


主人公のロン(ジャッキー)は拳法の達人であるお爺ちゃんと山奥の小屋でひっそり暮らしていたのだが、いつも遊んでばかり。
いつも遊んでばかりで、お爺ちゃんから言われた「人前で拳法をむやみに使うな」という教えも無視していた。

実はお爺ちゃんはヤムという武術家に命を狙われていて山奥で隠居していたのだが、ロンの軽率な振る舞いが発端となり居場所を突き止められ、ロンの目の前で殺されてしまう。

怒りにかられたロンを諌めたのは、お爺ちゃんの旧友を名乗る謎の老人「八本足の麒麟」。
復讐のため、ロンは八本足の麒麟の元で過酷な修行を開始する・・・。



テーマとなる「笑拳」は、喜怒哀楽の感情をモチーフとした拳法。戦いの最中でそれらの感情を露わにすることで、相手の精神を混乱させるのだ。
そしてこれがまた観直すとよくできていて、ストーリーの流れもこの「喜怒哀楽」に沿って進んでいく。

始めのやんちゃし放題、お爺ちゃんのいうことなんてどこ吹く風の「喜」。
そんな中、お爺ちゃんが殺されてたぎる「怒」、直後に事実を直面して訪れる「哀」。
八本足の麒麟との「楽」しくも厳しい修行の日々。
最後には「喜怒哀楽」を戦いの中で爆発させ、仇を討つ。


ジャッキーらしいコミカルな演技とアクション、そして若き日のジャッキーが持つ肉体美が見もの。
定番のイスとテーブルを用いた格闘シーン、お爺ちゃんに叱られたり、女装してみたりと忙しい。
八本足の麒麟のもとでの修行シーンでは唐揚げの奪い合いも修行のひとつ。そして上半身裸で砂袋を引きずるトレーニングを行うジャッキーの身体はすさまじい。


復讐のために学んだ拳法は、そもそも感情表現のはっきりしたロンという人物像にベストマッチ。

最後には「怒」の拳でとどめを刺し復讐を果たすところがまた憎い。すでにこの時の「怒」の感情は、心を支配するようなものとは異なり「己の力として制御できるもの」ということだ。


うーん、すげえ面白かった。