心の雑草

「げ」と申します。「旅=人生」というライフスタイルをめざして、心の雑草を抜いては肥料に変えていくブログ。

小説版「空の境界  未来福音」  感想

こんにちは、一歩です。


昨日観た劇場版の感想はこちらからどうぞ。
空の境界 未来福音 (星海社文庫)</a><img src="http://ir-jp.amazon-adsystem.com/e/ir?t=bloodysin1-22&l=as2&o=9&a=406138919X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />" target="_blank" title="「空の境界 未来福音」">「空の境界 未来福音」を観た熱がまだ残っている今、さっそく原作を読みなおしてみました。

原作と映画とで二重に広がる「未来福音」。まるでストーリーの中の二人の未来視能力者のようです。

というわけでストーリーそのものの感想、いってみましょう!

空の境界 未来福音」は、同シリーズの中で最後に発表された作品。これまでに執筆された物語の間の時間に起きた「二つの出来事」を軸に「未来との向き合い方」を描いた、正当にして堂々たる外伝となっています。

ひとつは主人公の少女・両儀式と爆弾魔・倉密メルカとの戦いの物語。
もうひとつは両儀式と微妙な関係の黒桐幹也と、ふとしたことで彼と知り合い初恋に落ちる女の子・瀬尾静音の物語。

テーマが「未来」、時間を扱っているので、時間軸も前後し、先にあげた二つの物語がクロスオーバーしながら進んでいく構造となっています。その辺の整理が少し難しかったりするんだけど、その構造自体がこの「未来福音」という物語のギミックでしょう。

うーん。まあ両儀式に関しての重要なお話でもある本作ですけど、今回はスルーで!
爆弾魔・倉密メルカとただの女学生・瀬尾静音には、「未来視」という特殊な能力があります。
だけど二人の能力は同じようでいて、決定的に異なる。そこが肝です。

瀬尾静音の能力は「予測」。無意識化で収集したデータから予想される未来が視える、というもの。
倉密メルカの能力は「測定」。右目には未来が、左目にはその結果にたどりつくための現在が視える。
どちらも視えることには変わりないものの、「予測」は変えられることができ、「測定」は変えられないと言えます。正確には変えられるものの、「測定される未来」が成功ならば、誰がそれに逆らうことができるでしょうか?


爆弾魔、倉密メルカの未来視はまさにそれだ。
彼は自分が視た“成功する未来”を実現させる為に、現実という数値を埋める。
そこに彼の自由意志はない。
趣味嗜好、喜怒哀楽、あらゆる希望的観測を差し込む意味がない。
……そう。正解が見えている以上、間違った行動などできる筈がない。
彼は、仮に――たとえ自分の行動(げんざい)が何一つ快楽のないものだとしても、“成功する未来”に逆らえない。
彼は未来を視るコトで、自らの過去(いま)を限定させてしまっている。
星海社文庫空の境界 未来福音 55p)

「未来が視えるなんて良いことじゃないよ」というのが切々と語られていくんですけど、この部分を読むと決定的になりますね。



結局のところ瀬尾静音は黒桐幹也との会話の中で「予測された未来は行動で変えられる」ということに気付き自身の能力と向き合い始めますし、救いのない「測定」の力を持つ倉密メルカは「あやふやだから無敵である未来にカタチを与える能力」であるが故に、測定した未来ごと右目を両儀式に殺されることで力を失いました。



どうして「未来福音」というタイトルなのかは、エピローグ部分、10年後に凝縮されているという感覚があります。
12年後、倉密メルカは絵本作家をしています。偽名を捨て、瓶倉光溜として。
そのとなりにいる小さな少女の名は両義未那。そう、自分の右目を殺した両儀式の娘。彼女は光溜の描いた絵本が大好きで、両儀式とも不思議な縁で切れなくなった彼に懐いてしまっています。

式の依頼で路地裏で商売する占い師に退去を通達しにいくことになった光溜ですが、この占い師は12年前から何度も、両儀式黒桐幹也、瓶倉光溜と関わってきていて……。この占い師は本作「未来福音」の影の主役レベルです。本当にいい立ち位置でみんなを視ています。

そうして。

物語は続いていく。
私の行き先は、漠然とではあるが、きちんと左目(いま)に見えている。
星海社文庫空の境界 未来福音 139p)

最後の最後、倉密メルカは未来視を失うことで、未来への希望「未来福音」を手に入れていることが示唆されます。この終わり方は好きだなあ、ほんと。
映画のセリフではわからない、左目(いま)という読ませ方とか、そういう部分も解釈しながら映画を思い返すと、感慨深いものがあります。


未来福音」はシリーズでも比較的短めの作品ですが、個人的にはトップクラスに好きな物語です。
興味を持った方、ぜひ読んでみてください。


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